環境と共生する住宅 「聴竹居」実測図集 増補版
竹中工務店設計部編 彰国社刊 本体3,500円

 

 

実測図面集というと、設計者や好きな人は目を輝かすのに、一般的にはあまり「おもしろが」れないのがふつうだ。ところが、この本には物語があり発見がある。
聴竹居は、建築家・藤井厚二が1917年に京都に建てた木造平屋建ての自邸。日本の気候風土に合った住宅のあり方を模索した実験住宅であり、2017年には昭和の住宅として初めて、国の重要文化財になった名建築だ。この本では、冒頭で藤森照信(建築史家・建築家)×内藤廣(建築家)×松隈章(竹中工務店設計本部設計企画部)の鼎談から始めている。
藤森は、「造形とは過去との関係」「サバイバルとリバイバル」「利休を消した」という言葉で語りながら、その後に「心を落ち着かせ、そこに居たくなるような気持ちをおこさせるのは、一体何だろう?」という一言を漏らす。内藤は、その場所の空気を取り入れていくローカリティを指摘し、モダンテクノロジーが目指す普遍性とは矛盾していた、「藤井は自己矛盾を抱えていた」と言う。松隈は、「日本で住宅を考える人は聴竹居は必ず見てくれ」と願う。
この鼎談で気持ちを揺さぶられてから、本の3分の2を占める実測図集に入っていく。最初に見るべきポイントが語られているせいか、それらを一つ一つ確認しながら読み進めるのは、なかなか楽しい。この家に暮らした藤井のご子息からのヒアリングも臨場感がある。
最後に、実測を行った竹中工務店設計部の言葉もいい。「藤井は自身の設計を旅になぞらえたが、思い返せば実測調査もまた旅のようだった」と言い、「現代に生きる自分たちの問題として,新しい旅にいざなわれる思いがした」と語っている。愛情あふれる本である。

(中野 照子)