『デザインとコミュニティ』 上原幸子編 上原幸子・斎藤啓子・朝比奈ゆり・萩原修著 武蔵野美術大学出版局刊 本体3,500円

 

 

「デザイン」も「コミュニティ」も、最近その意味するところが広がってきている。「デザイン」は、何らかの目的や機能を色や形で表現することだけではなく、新しい関係性までつくっていく。「コミュニティ」は、単なる共同体や地域社会という意味ではなく、具体的な作業を通してそれをつくり上げる過程が重視されている。

では、タイトルの「デザイン」と「コミュニティ」をつなぐ「と」とは、一体何なのか。頭でっかちに考えて本を手に取ると、冒頭から「自分を可視化しよう」と始まる。自分の遊びの原体験地図をつくる、2人1組になって似顔絵を描き合い、あるいは紙芝居をつくって自己紹介するワークショップだ。楽しみながら思考を整理して、身体で覚えていくストーリーなのだとわかる。

著者は、デザインやコミュニティの現場で長く活動を続けている4人。子ども遊び場づくりや市民活動、行政のまちづくりセンターで指導・支援、造園家の経験を生かした公園計画や住民参加のまちづくり、地域やものづくりのプロデュースなどさまざまからの報告だ。「自分をデザインする」「参加をデザインする」「地域のネットワークをデザインする」「人と組織をつなぐデザイン」「プロジェクトをデザインする」「生活圏をデザインする」という各章に、「品川用水ワークショップ」「こだいらブルーベリーリーグ」「世田谷区立桜丘すみれば自然庭園」「中央線デザインネットワーク」「きぬたまあそび村・せたがや水辺の楽校」「地域映画『タカハマ物語』」など34の事例が紹介されている。

それにしても、最初のワクワクした高揚感を維持してカタチにしていくには,コツコツと積み上げていかなければならない。「デザイン」も「コミュニティ」も地道な努力から生まれるのだ。

(中野 照子)