土祭 2009-2015

益子町編集・発行  里文出版発売  本体1,800円

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栃木県芳賀郡益子町。益子焼きで知られるこの町は、平成の大合併の時に、あえて小さな町であることを選択した。そのなかで企てたのが「この土地で生きることの祭り」。町長はじめ志を持った人々がつくり上げたのが、「土祭(ひじさい)」である。祭りはこれまで3年ごとの本祭3回、前年の前土祭(まえひじさい)2回が行われており、この本は2009年から2015年までの記録である。

祭りの総合プロデューサーをつとめた馬場浩史が意図したのは、「益子ならではの理想の暮らし」を表現し、地域のあちこちに未来に対する「希望の芽」を生むこと。かつて民藝運動に心血を注いだ陶芸家の濱田庄司が益子に住み、陶芸を行いながら日々の生活を楽しみ、町の人々に新しい生き方や美意識を伝えたように、現代における町の新しい価値を見いだすことだった。やきものと農業の町である益子が、自分たちの足元にある「土」から暮らしを見直す試みは、多くの人を引きつけ、県内外からの来場者を呼んでいる。

神社仏閣の奉納や収穫祭ではない新しい祭りとは何なのか。本ではたくさんの写真が続くが、いわゆる祭りらしい催しものの写真は多くない。古い家屋などに置かれたアート、空や森や畑、採れたての野菜や作業する手など、光や匂いや湿り気を感じさせる町の風景が圧倒的に多い。そこには、本の最初にある昭和30年頃の益子の職人たちを撮った写真と同じように、静けさと力が感じられる。

益子の未来を見ていた馬場は2013年に逝去するが、祭りはその後も町民によってつくり続けられている。それこそが新しい暮らしのあり方。「風土を育むいとなみ」が育っているのだということがわかる。

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土祭では、町のあちらこちらに、益子の昭和30年代の写真を用いたビルボードが設置された。