日本木造遺産 千年の建築を旅する

藤森照信・藤塚光政著  世界文化社刊  本体2,500円

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平等院鳳凰堂や厳島神社を始めとする日本の伝統的な木造建築について、私たちはどのくらいの知識を持っているのだろう。二重螺旋階段の会津さざえ堂や断崖絶壁に貼り付いた投入堂などは、キッチュな建築として興味本位の認識しかなく、木造建築としてのおもしろさはよくわかっていなかった。まして、屋根のお化けのような大瀧神社や、洪水の時にはかついで引っ越すという船頭小屋など初めて知るものばかり。この本では、神社仏閣から城、住宅、茶室、小屋、橋など長く生き続ける23の木造建築を取り上げ、そのすごさを藤森のわかりやすい解説と藤塚の迫力ある写真で伝えている。

特に藤塚の写真は、30年以上前から少しずつ撮り貯めていることもあり、単なる「建築写真」という枠を超えて、その建築の魅力を大胆に切り取っている。一般的な外観写真は、目次のところに切手大ほどの大きさで載っているだけという徹底ぶりである。現代建築の撮影では「晴れ男」を自認する藤塚だが、これら日本木造遺産の撮影では雨に降られることが多かったようだ。しかし、その天候こそが、伝統的な木造建築には合っている。しっとりと濡れた姿、漆黒部分は闇となり、長く生き続けてきた木造建築の気配が伝わってくる。

巻末には構造家・腰腹幹雄が現代建築との比較も加えながら解説。三人三様の文章も楽しめる。