Yチェアの秘密
人気の理由、デザイン・構造、誕生の経緯…、
ウェグナー不朽の名作椅子を徹底解剖

坂本茂、西川栄明著 誠文堂新光社刊 本体¥2,200

518i6ailuzl-_sx349_bo1204203200_

著者の坂本は木工デザイナー。カール・ハンセン&サンズ(以下CHS)の日本法人ディー・サインで24年働き、Yチェアの販促・商品開発などに携わった経験がある。
Yチェアとは、デンマークの家具デザイナー、ハンス・J・ウェグナーがCHS社に依頼されて1949年にデザインした椅子のひとつで、正式名はCH24。独特のフォルムは一部を見ただけでもわかる人が多く、長く使っても飽きのこない椅子として人気がある。生涯500以上の椅子をデザインしたウェグナーの椅子の中でもっとも生産されている、文字通りロングセラーの椅子である。このYチェアの歴史からデザイン、構造、人気などを徹底的に分析したのが本著なのである。
すごいのは、デザイン・構造について、ひとつひとつの部位に分けて細かく写真で示しながら、分析している第2章。「それぞれの部位のデザインや構造には意味がある」というサブタイトル通り、つくることに収斂していったことに驚かされる。なるほど、ここまで考えられていれば、日本でのYチェアの販売数が年間5000~6000脚(これは世界全体での生産数の1/4~1/3にあたるそうだ)という数字も納得できる。
しかし、これだけ売れるとなれば、コピー商品も出てくるだろう。本著では「Yチェアの模倣品を見分ける方法とコピー対策」でひとつの章を立てている。
Yチェアは、部材を大量につくる大量生産と座面のペーパーコード編みの手作業を組み合せていること。構造面では各部位は必要な強度を保ちながら、デザインとしては細身になるよう、細部まで徹底して考えられていること。模倣品との比較写真で見ると、こうした手間による違いが明快に見えてくる。こんなにも丁寧に説明してしまったら、もっと模倣品がでてくるのではないか、と心配するほどだ。
坂本がここまで公開しているのは、ここまでできなければほんものにはならない、ということだろう。カタチだけなぞっていては、この椅子に「こころ」を込めることはできないのである。多くの信奉者に支えられている名品の強さを感じた。