『コンフォルト』2003年11月号(70号)〜2004年7月号(78号)で連載していた「階段の規矩術」が収録された、『階段空間の解体新書』が彰国社より発刊されました。著者は、田中智之さん。田中さんが描くパースは、その超絶技巧ぶりから“タナパー”と言われるほど、建築業界では知られています。

当時、階段について連載をしたいと早稲田大学のとある研究室に相談に伺ったところ、最初に紹介されたのは松本泰生さんでした。松本さんはこちらの意向を聞いた上で、さらにふさわしい方がいるとして、声をかけていただいたのが田中智之さん。
*松本泰生さんは、東京の街中の階段をリサーチされていて、同時期に「東京小路階段逍遙」という連載をしていただいていました。その後、『東京の階段―都市の「異空間」階段の楽しみ方』(2007年、日本文芸社刊)や、『凹凸を楽しむ 東京坂道図鑑』(2017年、洋泉社刊)などの書籍を上梓されています。

連載は3ページ、見開きでパースを2点描いてもらうということでスタートしました。第一回を飾ったのは「日生劇場」です。村野藤吾の建築で階段に開眼した身としては、小躍りするほどうれしい事例。初めての取材は、大丈夫? というくらい短い時間、確か2時間くらいだったでしょうか。ちょっと不安を抱きつつ、アップされてきたパースを見て、目玉が飛び出ました。なんですか、このクオリティは! 独特の視点でのパースと、ディテールの数々……。この出会いに感謝した瞬間でした。
毎回、手描きにもかかわらず1文字の修正をお願いするなど、かなり無理な注文もしていましたが、それに対して何も言わずに対処していただいて、いまとなっては申し訳ないことだったと思うことも。

『コンフォルト』70号の連載第1回。原図は青インクで描かれていましたが、スミ(黒)+特色(毎回異なる色)の2色で印刷していました。

その後、どうにも新宿駅が好きになれないのは、空間把握ができないからだ、と田中さんにお願いして描いてもらったのが「ザ・新宿駅解体」(商店建築別冊『viewer』)。半日ほど駅と周辺をめぐっただけでしたが、追加でさまざまな資料を調べながら描かれたらしく、それを見て、ふむふむと復習したことを覚えています。駅と、その周辺を描く、という「駅解体」は、渋谷駅や東京駅にもつながりました。

『コンフォルト』では、2013年6月号(132号)でもお世話になりました。このときは、窓の特集で、茶室の窓の変遷について、柱間をマドとした大徳寺黄梅院客殿作夢軒、壁を穿って光を取り込む下地窓の例として大徳寺玉林院南明庵蓑庵(さあん)、小さな空間にさまざまなマドを散りばめた南禅寺金地院小書院八窓席を取材、作画していただきました。

『コンフォルト』132号。このときは、できるだけ原図に近い青色1色(特色)で。

このたび、彰国社の神中智子さんのおかげでお蔵入りすることなく、『ディテール』での連載を含め、たくさんの事例がプラスされて、新たに日の目を見ることはこの上ない喜びです。見応え、読み応えのある本です。ぜひたくさんのかたにご覧いただきたいと思う次第です。

A4判 本体価格2,700円 彰国社刊
注文はこちらでも 彰国社webサイト http://www.shokokusha.co.jp/?p=9587

(編集部/阪口公子)