9月5日発売号の読者プレゼントは、深澤直人がデザインしているジャクエツの遊具の作品集『YUUGU JAKUETS×Naoto Fujkasawa』。しかも、深澤直人や藤井保、佐藤卓のサイン入りという貴重な一冊です。このビジュアルブックについて、編集者でライターの清水潤さんに書評というかたちでまとめていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あそんじゃう」遊具の生命力を

自然、都市の環境の中に捉えた作品集

幼稚園、保育園などの幼児教育施設向けの遊具メーカー、株式会社ジャクエツがプロダクトデザイナー・深澤直人のデザインした遊具シリーズを大判の写真集として出版した。

ページを開くと、そこではYUUGUであるらしい色鮮やかな、ちょっとキュートなオブジェたちが主人公で、彼らは人気(ひとけ)のない海辺にたたずみ、風がさわさわと吹き渡る草原に埋もれながら、まるで旅をしているように見えてくる。やがて彼らは、どこかの都市のモダンでクラシカルな雰囲気の博物館に現われて……。

詩人・佐々木寿信の心やさしく、懐かしい言葉を紡いだ詩が添えられ、感じるままに楽しむ絵本のように編まれているが、展開する光景はどうにも謎めいて興味を引かれる。YUUGUとは何だろうか。

刊行と同時に東京・代官山の蔦屋書店で関係者のトークショーが開かれ、出版までの経緯などが語られた。子どもの遊びの大切さを追求するジャクエツの徳本達郎社長がもちかけて、深澤がはじめて遊具のデザインを手掛けたのは10年ほど前に遡る。2011年にOMOCHIを発売。子どもたちがよく遊ぶと好評を得て、これまでにCUBE、TAWARA、BANRI、HOUSE、RAFT、DONUTという名前の合計7点が生み出された。

一般的にイメージされる定型や、動物などのキャラクターでつくる遊具とは異なり、これらには子どもたちがとりつき、無意識のうちに多様な遊びをする形状がつくりこまれている。そこにはデザインの基本となるアフォーダンスという概念があるが、直感的には思わず「あそんじゃう」遊具と言うことができるという。

たとえばOMOCHIは直径2mのふっくらとした丸餅のかたちをした滑り台だ。中央に50㎝幅で3段の昇り段となだらかな斜面が彫り込まれ、滑る楽しみがある。と同時に、丸餅の曲面に両手でぺたぺた貼り付いて、ずるずるとずり落ちる遊びが子どもたちから自然に生まれる。そのような「あそんじゃう」デザインのアプローチを深澤は「喜びの要素を隠し持たせてつくる」とも語っている。

作品集の撮影は写真家・藤井保に全面的に委ねられた。YUUGUは遊具としてのデザインとともに、人がいないときに環境の中で美しく目に映るようにデザインされている。人がつくったものと自然界の接点を視つめるというスタンスを持つ藤井は、深澤のデザインをスタジオではなく、自然と、その対極の都市空間に置いて撮りたいと考えたという。

決して小さくはないFRP製の被写体を思い切り自然の中に連れ出した大胆さには驚かされるが、写真からはそれぞれの風景の中で人工物であるはずのYUUGUたちが小さな生命を持っているかのように、何か伝わってくるものがある。

今後、ジャクエツは映像ディレクター・中村勇吾を起用し、子どもが遊んでいるYUUGUの映像作品も企画している。

(文/清水潤)

 

写真/藤井保

詩/佐々木寿信

アートディレクション/佐藤卓

発行日/2018年7月26日

発行/株式会社ジャクエツ

発売/日販アイ・ピー・エス

64ページ A3変形(297×400㎜)

定価/¥6480(税込)

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