テレワークにABW(Activity Based Working)、コワーキングなど、オフィスを取り巻く環境は、変化を遂げています。とくに、新型コロナウィルスの影響は大きく、在宅勤務をデフォルトとする企業も現れ、そのあり方も今後議論が高まることでしょう。
では、オフィスそのものの存在まで霧消してしまうのでしょうか?
コンフォルト2020年6月号(174号)、特集「オフィスデザインが働き方を変える」のうち、「オフィスデザインの潮流」でレクチャーしてくれた八塚裕太郎さんは、「お互いを理解し、深い議論をするために集まれる場所は必要」と説き、「神社の境内のような心のよりどころとなるオフィスは存続するはず」と言います。
そのひとつのかたちが、パナソニック日比谷に設けられた立礼式茶室「得心軒(とくしんけん)」(2018年席披き)といえるかもしれません。茶の湯をこよなく愛した創業者・松下幸之助翁の思いを凝縮させたもので、京都にある迎賓施設「松下真々庵」のように、国内外のお客さまをもてなす空間として、茶室という形態がとられました。そのディテールにはパナソニックの創業時からの理念や来歴が込められています。たとえば、版築(はんちく)風の壁は、創業から100年を積み上げてきたひきこもごもの歴史、内部の壁は和紙貼りで、植物の繊維が絡まってできる和紙に社員の結束を表しています。また、家内制手工業で二股ソケットを製造していた当時の工房を10分の1模型で製作して展示したり、伝統工芸の作品を披露するコーナーをつくるなど、ものづくりを大切に考えてきた同社の姿勢をも表現しています。

パナソニック日比谷立礼茶室「得心軒」(p.53-60)

効率化で企業の利益を上げることは、企業の存続にとって重要なミッションでしょう。その大前提として、企業が向かうべき方向、大きな方針を共有した上で、各々がクリエイションを発揮できるオフィスデザインをすることがたいせつになってくるのだろうと思います。
(編集部 阪口公子)




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