和紙の茶室、織物の茶室

156号で紹介した「織物の茶室」(設計は橋口新一郎さん)は、ステンレスフレームの立方体。そのフレームに留められた特注のダボ(2700個も!)に2kmもの糸を掛けることで三次曲線を描いた不思議な空間です。
誌面では掲載点数が限られていたので、ここに「織物の茶室」の前に制作された「和紙の茶室」を含め、追加掲載します。

襖や内装材を扱う「カドカワ」の楞川(かどかわ)耕司さんの、和室離れを憂う想いに発起した橋口さん。2014年に「和紙の茶室 蔡庵」を制作して、西大寺で展示しました。襖紙の幅を四等分にカットして、楮の枝を組んだフレームに差し込みながら積層して壁にしています。フレームのサイズは襖紙が由来となっていて1.8m角に。完成した茶室は、紙の自重でたわみ、まるで地層のようです。ただし襖紙の一枚一枚は軽量でも、これだけの枚数になると重量は相当だったと橋口さんは話してくれました。

2014年10月、和紙の茶室 蔡庵 in 西大寺
壁の材料となった襖紙

 

「和紙の茶室」から一転、軽やかな糸が重畳する「織物の茶室」。糺の森・下鴨神社に始まり、ニューヨークや京都国立近代美術館に続いて、再び下鴨神社へ、と連続して展示されました。156号では、白沙村荘 橋本関雪記念館の存古楼(ぞんころう)という橋本関雪の画室で、細かな光の粒子に包まれて端座していましたが、下鴨神社では屋外。スラブ(節)のある糸は、太陽光を受けてきらめいていました。

2016年2月11日〜14日、11月3日〜6日、2017年3月17日〜18日の期間に展示されました。

2016年2月11日〜14日、織物の茶室 in 糺の森の下鴨神社
糸の節に光が絡まるように、あえてスラブ糸を用いたとのこと
茶室内からの見上げ

「織物の茶室」の糸は2kmもの長さで、途切れることなくダボに掛け続ける、根気のいる作業です。まるで、招くお客さまに思いを馳せて準備をするお茶会のようです。しかも展示が終わると、糸はばっさりとカット。まさに一期一会の心意気が感じられます。

2017年4月25日〜5月5日、織物の茶室 in ロンドン芸術大学
ダボには溝が切られており、そこに糸を掛けていく

 

次は8月2日と3日に英国・キュー王立植物園での展示が待っています。そして、「和紙」「織物」に続き、新たな茶室の制作も進んでいるようです。(阪口公子)

 

写真/淺川敏(和紙の茶室、織物の茶室 下鴨神社)、橋口新一郎(織物の茶室 ロンドン)

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