東京・表参道のGYRE GALLERY(ジャイル ギャラリー)にて、8月15日より、展覧会「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史のある風景と反復進行」が開催されている。
会場風景
展覧会概要
フランスの哲学者ロラン・バルト(1915〜1980)は、「表徴」が溢れている中心のない空虚な日本に注目し、それを「意味の帝国」に対し「表徴の帝国」と表現した。天皇、都市、女形、すき焼き、礼儀作法、パチンコ、学生運動も表徴であって、意味から解放された日本文化の自由度を描写した。そして、「意味の帝国」に対し「表徴の帝国」は、西欧的な「意味」への脅迫的な執着からの解放という捉え方を提示した。日本文化は、記号群(シニフィアン)の連鎖が意味(シニフィエ)によって停止されることなく連鎖し展開していく。この「日本」の捉え方を別の角度によって反転すると「日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残る」という自決する数ヶ月前に遺した三島由紀夫(1925〜1970)の言葉が今の日本に反響する[*1]。ロラン・バルトと三島由紀夫の双方が捉えた日本の「空虚」を前提にして、現代活躍している次世代の日本の作家によって戦後美術家たちを逆照射(反復進行[*2])し、意味から解き放たれた中心のない空虚な戦後美術史のある風景を浮かび上がらせていく。今年8月に太平洋戦争終結から77年が経過する。77年というのは明治維新から太平洋戦争終結までと同じ長さである。つまり、1868年から1945年までが77年間、そして1945年から2022年までが同じく77年間である。戦前と戦後の長さが同じになる。このような歴史的連続性を前提にして、「戦後美術史のある風景と反復進行」をテーマにした展覧会を企画した。
赤瀬川原平「あいまいな海について」案内状(制作年:1963年) サイズ: 220×162mm 材質:印刷物 Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE本展に出品される作品が、作品単体では完結されず時代を超えて反復から連鎖へ、そして転移していく様態を提示し、結果的に全ての出品作品は自ずと時代的連続性を表象することとなる。このことを本展では「反復進行」[*2]と呼んでいる。本展の構成趣旨は、「日本」の戦前や戦後の時代精神を担った作家と現代活躍している新たな世代を代表する作家へと連繫し、時間の連続性を浮かび上がらせ、さらに昭和、平成、令和を通してそれぞれの時代精神を対象化し、そしてわれわれが今後何処へ向かおうとしているのかを問いかけていくものである。(飯田高誉 / 本展覧会企画者)
*1.1970(昭和45)年7月7日付の産経新聞夕刊に掲載された三島由起夫のエッセイ
*2.反復進行(独:Sequenz)とは、音楽用語の一つ。ある楽句を音高を変えながら反復させることをいう。ドイツ語「ゼクヴェンツ」(Sequenz)に由来して「ゼクエンツ」とも呼ばれる
出品作家:河原 温、三島喜美代、中西夏之、高松次郞、赤瀬川原平、三木富雄 、北村 勲、北山善夫、青山 悟、金氏徹平、加茂 昂、大山エンリコイサム、須賀悠介、MIKA TAMORI、国民投票
information
「ヴォイド オブ ニッポン 77 戦後美術史の ある風景と反復進行」展
会期:2022年8月15日(月)〜9月25日(日)
開場時間:11:00-20:00(GYRE 営業時間に準じる)
休館日:8月22日(月)
会場:GYRE GALLERY(東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F)
主催:GYRE / スクールデレック芸術社会学研究所
企画:飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)
企画協力:高橋洋介
会場設計:梅澤竜也(ALA INC.)
デザイン:乗田菜々美(graphic potato)
意匠協力:C田VA(小林丈人+髙田 光+太田 遼)
機材協力:Suga Art Studio
撮影協力:幸田 森
協力:The Kyoto Shimbun / LEESAYA / MEM / NAGOYA GALLERY / Mizuma Art Gallery / SCAI THE BATHHOUSE / Takuro Someya Contemporary Art / Yumiko Chiba Associates
作家プロフィール・展覧会詳細
https://gyre-omotesando.com/artandgallery/void-of-nippon77/