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人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子のコレクション「ふたりのアフリカ、手仕事の宇宙」展、開催中

ポくポく こツこつ とつとつ
木の枝で椅子を組む。

するり
ひょうたんの鉢で水をすくう。

見渡す限りの大地がひろがるサバンナに暮らす民族たちの道具からは、力強いリズムが聞こえてくる。
1970年代に3年半、オート・ヴォルタ(現・ブルキナファソ)に暮らし、西アフリカ・ヨーロッパ・日本という3つのフィールドから文化を見つめ、数々の名著を遺した人類学者の川田順造と、現地で川田の助手もつとめた妻で陶芸作家の小川待子。

ふたりが西アフリカで収集した生活道具と資料、合わせて約350件にのぼるコレクションを公開する『ふたりのアフリカ、手仕事の宇宙――人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子のコレクション』展が世田谷美術館で開催されている。

椅子 ブルキナファソ 1970年代

〈イントロダクション:いろどる―赤、白、黒〉では、川田の著書にある言葉「文化の三原色」を切り口に、儀礼に用いられた仮面や泥染めの木綿布などを展示する。

〈第1章 アフリカとの出会い〉では、小川がマグレブ(チュニジア・アルジェリア・モロッコ)への旅でしたためたスケッチ群が見どころだ。これは川田の雑誌連載『マグレブ紀行』の挿絵でもある。ふたりが旅先で目にしたものへの視線がどんなものだったのか、思いを馳せる。

〈第2章 サバンナに暮らす〉の会場には、川田が通算7年以上にわたる西アフリカでの調査で録音した歌声が流れている。生活道具としてのひょうたんの器やうちわを見ると、施された繕いも精緻かつ非常に細やかで、卓越した手業に目を瞠る。

儀礼用仮面 ブルキナファソ(グルンシ) 川田順造・小川待子コレクション  1970年代収集?

儀礼用仮面 ブルキナファソ 川田順造・小川待子コレクション  1970年代収集

<繕い入り鉢> ブルキナファソ   川田順造・小川待子コレクション  1970年代収集 撮影:渞忠之

<壺> ブルキナファン  川田順造・小川待子コレクション 1970年代 収集 撮影:渞忠之

〈第3章 アフリカの色とかたち〉の会場には、泥染めされた木綿布、絞り染めを施された藍染めの布、革細工のクッション、ビーズの装飾品たちがならんでいる。そこには生産効率や機能からモノを捉えがちな私たちの観念を突き抜ける大胆さや迫力がある。

最後の会場となる〈第4章 海の見える家―ふたりのアフリカ〉は、小川自身がディレクションしたインスタレーション空間だ。ここでは、100点を超えるさまざまなモノたちのいきいきとしたエネルギーを浴びることができる。

川田順造・小川待子邸 撮影:渞忠之


手から生み出されたこれらの道具のもつ美しさはこころを打つ。しかし、これらは他者のための美を目的としてつくられたものではないだろう。

わたしは想像する。
おおきないちまいの木綿布を染めるひとを。
布に針を通し、糸できつく絞る。
染め上がりや、腰布に用いたときのすがたを空想しながら、絞りをいくつもほどこす。
それを真っ赤な染液に浸しこむ。
なにが生まれるだろう、喜びとハラハラ。
やがて引き上げ、ひとつひとつの糸をとく。
太陽にさらして乾いた腰布には、これまででいちばんこころ惹かれる、
見たことのない模様ができあがった。
ここに、なにかがいる。そのひとは思った。

絞り染め赤腰布 ナイジェリア 川田順造・小川待子コレクション 1970-80年代収集

展示品と向き合うと、そんなふうに「かれら」の視線・手遣い・息遣いを感じる。
ぶりぶり良い音がでる木琴を組み立てるかれ。
綿花から糸をつむぐかのじょ。
水でこねた泥塊を積んで乾かしながら家をたてるかれら。
伝統的な様式に従って作るうちに、個人の創造が芽を出そうとする。生きるための必要、引き継がれた形式、そして個人の創造という三つの力が、手仕事の道具たちにいのちを宿らせる。
人間が日々の生活を、あるいは人生そのものをこころ豊かに過ごすために必要なのは、みずみずしく発揮されるそんな“いのちのパワー”なのではないか。

13000キロの距離と数十年を経て、西アフリカの道具たちのいのちの合奏が、東京の世田谷にいまひびく。機械による大量生産で造られた商品に囲まれて暮らし、猛スピードで消費するわたしたちを、目覚めさす。
(文/木縁俊太郎)

ふたりのアフリカ、手仕事の宇宙
人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子のコレクション


会期:2026年7月11日(土)~9月6日(日)
開館時間:10:00~18:00(入場は〜17:30)
休館日:毎週月曜日
会場:世田谷美術館1階展示室(世田谷区砧公園1-2)
観覧料:一般1,400円、65歳以上1,200円、大高生800円、中小生500円など

主催:世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団)
後援:世田谷区、世田谷区教育委員会、駐日ブルキナファソ大使館
協力:神奈川大学日本常民文化研究所
助成:芸術文化振興基金
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/

関連イベントとして、9月5日(土)にライヴ「西アフリカの大地の音と舞」(満席)、9月6日(日)にクロストーク「川田順造が見つめた世界」が開かれる。詳しくは下記へ。
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/event/detail.php?id=ev01176
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