和紙を漉くといえば、材料が入った水のフネに簀桁(すげた)を差し入れ、何度かゆさぶって水を切る、そんなシーンを思い浮かべる人が多いと思います。流し漉きと呼ばれる方法です。でも、バリのジョセフ・ボーデさんの工房、Aliranで用いていたのは別のやり方でした。
「小さな紙を漉いてみましょうか」そう言ってジョセフさんが取り出したのは、両手を少し広げたくらいの長さの、網を張った木の枠。スタッフのルックマンさんが手早くレンガを四方に置いた上にビニールシートを広げ、簡易なプールをつくりました。そこに枠を置き、水分を含んだ繊維を手でていねいに並べていくのです。
四方は繊維を少し厚めにします。枠の中がいっぱいになったら今度は指先でとんとんと繊維と水を根気よくゆさぶっていきます。
これでよいとなったら水を漉し、立てかけて乾かします。
翌日。「これはお土産です」。できあがったその紙をジョセフさんがくださいました。繊維が絡まった厚い紙。透かすとよりその様子がよくわかります。植物の繊維をいっぺんほぐし、求めるかたちに組み直す。ああ、これが紙なんだ。
帰国後、いただいた紙を、カメラマンの喜多章さんが制作した煤竹の花入れと組み合わせてみました。紙で場をつくる。軽くて自然で、お花も映えて、なんかいい感じになりました。
ジョセフさんの工房の記事については本誌をお読みください。
(編集部・多田)