公開70周年記念 映画『羅生門』展

1950年(昭和25年)8月26日に劇場公開された映画『羅生門』は、日本国内ではヒットに恵まれなかったものの、翌年の1951年9月にヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞、さらに1952年3月には米国アカデミー賞名誉賞を受賞し、同作品を監督した黒澤明の名を国内外に知らしめ、国際的な評価を確立した。日本映画の水準の高さを世界に示すとともに、国内では戦後復興のひとつの象徴として、日本映画界に1つの金字塔を打ち建てた記念すべき作品である。

スタジオ撮影スチル写真 ©KADOKAWA 1950 株式会社KADOKAWA所蔵

黒澤の卓越した演出力だけでなく、それまでの日本映画の作り方を革新した数々のスタッフワークに支えられている。登場人物のそれぞれ食い違う証言が真実を覆い隠してしまう橋本忍の脚本術、ロケーションを活かしあえて太陽にキャメラを向けた宮川一夫の斬新な撮影、巨大な羅生門をオープンセットとして造形した松山崇ら美術スタッフの功績、日本の中世の物語にボレロ調の旋律を大胆に組み込んだ早坂文雄の音楽、そして、三船敏郎、京マチ子、森雅之、志村喬ら俳優陣の演技といった複数の職能の優れたアンサンブルが、この映画の醍醐味となっている。

松山崇『羅生門』写真アルバム ©KADOKAWA 1950 玉川大学 教育学術情報図書館所蔵

本展では、『羅生門』の企画から撮影、公開、世界展開にいたるまでの各種の資料などから、この作品に多角的に迫り、本作を彩るさまざまなエピソードを再検証する。また、『羅生門』は、2つだけのセットとロケーションという、一見すると”安上がり”な企画でスタートしたが、撮影準備中に黒澤のイメージが膨らみ、通常の予算を膨大に上回っている。第2章の「美術」では、製作時から話題となっていた『羅生門』の映画美術に焦点をあて、同映画で使用された扁額の再現画や、美術監督松山崇旧蔵の写真アルバムも展示される。今回初めて披露される貴重の品も披露されるほか、デジタル技術を使った新しい資料展示の可能性にも取り組む。

展示構成:第1章 企画と脚本 / 第2章 美術 / 第3章 撮影と録音 / 第4章 音楽 / 第5章 演技 / 第6章 宣伝と公開 / 第7章 評価と世界への影響 / 特別コーナー:旅する羅生門

information

展覧会名:公開70周年記念 映画『羅生門』展 / Rashomon at the 70th Anniversary
会期:2020年9月12日(土)〜12月6日(日)
休室日:月曜
開室時間:11:00-18:30(入室は18:00まで)
会場:国立映画アーカイブ 7階 展示室(東京都中央区京橋3丁目7-6)
料金:一般 250円、大学生 130円、シニア・高校生以下および18歳未満、障害者(付添者は原則1名まで)、国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズは無料
*料金は常設の「日本映画の歴史」の入場料を含む
*学生、シニア(65歳以上)、障害者、キャンパスメンバーズの方は、入室時に年齢などの証明書の提示要
*国立映画アーカイブの上映観覧券(観覧後の半券可)の提示で、1回に限り、一般200円、大学生60円で鑑賞可
*2020年11月3日(火・祝)「文化の日」は入場無料
主催:国立映画アーカイブ、京都府京都文化博物館、映像産業振興機構
協力:文化庁、株式会社KADOKAWA、株式会社アイ・ティー・ワン
問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
会場ホームページ https://www.nfaj.go.jp/exhibition/rashomon2020/

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