前川國男(1905-1986)の設計で知られる、山梨県立美術館で開催されている、栗田宏一(1962-)と須田悦弘(1969-)による特別展。どちらも山梨県笛吹市の出身で、独自の表現によって地歩を築いてきた現代アーティストである。
栗田は、25年をかけて日本全国の旧市町村3233の地を訪れ、その土地で一握りの土を採集している。それに一切、着色などの手は加えずに、小瓶に詰めて並べたり、風が吹けば飛んでしまうようなあやうさもあるインスタレーションで、土がもつありのままの美しさを伝える。土=茶色という概念を打ち破る多彩な色彩は、見るものに驚きを与える。
須田は、朴の木を削り、彩色した、一見して木彫とはわからぬ植物の彫刻作品を、空間の中にさまざまなかたちで展示する。時に、展示品リストからは読み取れない会場の物陰や、隙間を覗き込んで目を凝らさないと見えない場所を須田が選ぶこともあり、須田の作品もまた、空間に対する一般的な認識を覆す清新な驚きをもたらしてくれる。
栗田宏一《soil library》展示イメージ
須田悦弘《雑草》展示イメージ
栗田は土、須田は植物をモチーフとした作品で、素材へのアプローチや作品化のプロセスは違えども、作品単体の美しさだけでなく、空間全体を使ったインスタレーションによって作家固有の世界観を表現する手法には類似点がみられる。本展では、日常の中に、もうひとつ別の世界へつながる扉が開かれる。
2021年1月16日(土)には、須田による公開制作イベントも開催される[※]。
栗田宏一《soil library》(左)、須田悦弘《泰山木:花》千葉市美術館蔵(右)
information
会期:2020年11月14日(土)~2021年1月31日(日)
開館時間:9:00-17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜(但し、1月11日は開館)、1月12日(火)
会場:山梨県立美術館(山梨県甲府市貢川1丁目4-27)
観覧料:一般 1,000円、大学生 500円、高校生以下無料(生徒手帳の提示要)、県内在住65歳以上は無料(健康保険証等の提示要)
※新型コロナウイルス感染症対策などから、スケジュールが変更となる可能性あり、最新の情報は会場ホームページを参照のこと
会場ホームページ:https://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/