箱根ポーラ美術館「モネ-光のなかに 会場構成:中山英之」

フランス・印象派を代表する画家のひとり、クロード・モネの作品を、国内最多の19点収蔵する神奈川県・箱根町のポーラ美術館にて、約1年にわたって開催される特別展。
《ルーアン大聖堂》や《睡蓮の池》、《セーヌ河の日没、冬》などの名品11点が展示されることに加え、展覧会タイトルにクレジットされている、建築家の中山英之が手がける会場デザインが、本展では重要な位置を占めているが、そうとは気付かせない演出となっている。

箱根ポーラ美術館「モネ-光のなかに 会場構成:中山英之」 《セーヌ河の日没、冬》 1880年 油彩/カンヴァス(ポーラ美術館収蔵)

同館は、富士箱根伊豆国立公園の中にあり、建物の2階に相当するエントランスエリアを除き、そのほとんどが地中に埋設されている。箱根の緑を抜け、エスカレーターで地下にある展示室に向かい、陽光とさらなる色彩を求めて戸外で制作に取り組んだモネの作品と対峙するという、来場者のアプローチを踏まえ、中山氏は「会場全体を自然光に限りなく近い質の光で満たされた空間に置く」というコンセプトを設定し、これをを可能な限りで実現した。

箱根ポーラ美術館「モネ-光のなかに 会場構成:中山英之」会場風景 ©︎Gottingham

会場全体を満たす「曇天のような柔らかい光」は、天井の入り隅部分を曲面とし、白い天井全体に照明をあてることで造形している。また、作品保護のため前面に入れる必要があるガラスへの光の反射を抑えるよう、これも曲面としたトタン製什器の濃い緑色側を絶妙に配置。場内を回遊する来場者の靴音を吸収するカーペットのセレクトなど、中山氏が検討を重ねたデザインが絶妙な効果をあげている。かつ、微細な調光が可能な最新のLED照明器具を用いた、照明デザイナーの岡安 泉の技術が、同館の学芸員が「これまで見たことのない絵の具の発色」により、作品を引き立たせている。

地下の展示室にいながらにして屋外を感じられるという本展の会場構成は、作品そのものにスポットをあて、ほかは暗くするという、従来の展示手法の逆を行くもの。ここでした味わえない空間を創出。モネ作品の新たな魅力を再発見するための旅へと人々を誘う展覧会となっている。

箱根ポーラ美術館「モネ-光のなかに 会場構成:中山英之」会場風景 ©︎Gottingham

information

「モネ-光のなかに 会場構成:中山英之」
会期:2021年4月17日(土)〜 2022年3月30日(水)
※展示替えあり、9月6日(月)〜10日(金)は休館
会場:ポーラ美術館(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285)

開館時間:9:00-17:00(最終入館は16:30)
休館日:年中無休(但し、展示替え期間を除く)
入館料:大人1,800円、シニア割引(65歳以上)1,600円(他の割引との併用不可)、大学・高校生1,300円、中学生以下無料 ※団体15名以上は割引あり
協力:丸八テント商会、遠藤照明、アーテリア

企画協力:中山英之建築設計事務所、岡安泉照明設計事務所
※COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大に伴う政府および地方自治体の要請により、スケジュールが変更となる場合あり(最新情報は、会場ホームページなどで告知)

展覧会詳細
https://www.polamuseum.or.jp/monet_inthelight/

ポーラ美術館ホームページ
https://www.polamuseum.or.jp/

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