北欧・フィンランドを代表する建築家の1人で、同国のモダニズムの原点を築いたとされるエリエル・サーリネン(1873-1950)にスポットをあてる企画展。
サーリネンは、ヘルシンキ工科大学在学中に出会ったゲセリウスとリンドグレンと共同で設計事務所を設立し、1900年パリ万国博覧会フィンランド館の建築が好評を博し、国際的なデビューを果たす。初期の作風は、ナショナル・ロマンティシズムと称される、アール・ヌーヴォーの影響をうかがわせながらも、国としての独立宣言が1917年12月になされる前のフィンランドにおいて、民族の独自の文化的ルーツを表現した建築は人気が高く、人々を鼓舞させるものであった。
ゲセリウス・リンドグレン・サーリネン建築設計事務所はその後、ポホヨラ保険会社ビルディング、フィンランド国立博物館などの設計を手がけたのち、首都ヘルシンキから西に約25キロ離れたヴィトレスク湖畔に、芸術家たちと交流できる理想の生活の場となるコロニーを建設する。同施設は「白い沼」を意味する湖の名からそのまま「ヴィトレスク」と呼ばれた。公共建築や駅舎、商業建築、住宅の設計、都市計画や家具やインテリアのデザインまで、次第に幅を広げていったサーリネンの作風は、多様な文化を受け容れつつ民族のルーツを希求した初期のスタイルから、独自の形態を通じて、新しいフィンランドらしさを提示しようというモダニズムへとやがて展開していく。サーリネンのデザインは、アルヴァ・アアルト(1898-1976)ら後進のデザイナー・建築家たちにも大きな影響を与えた。
フィンランドの国民的建築家としての地位を確立したサーリネンは、1922年に米国で行われた、大手新聞社シカゴ・トリビューンの本社ビルの国際設計競技で2等を獲得。これがきっかけとなって翌年に家族と共に米国に移住する。なお、この時は未だ子どもだった息子のエーロ・サーリネン(1910-1961)も後に建築家となり、現在はホテルにコンバージョンされている、ニューヨークの《JFK国際空港TWAフライトセンター》のターミナルビルの設計者、「チューリップチェア」のデザイナーとして名高い。
本展では主に、エリエル・サーリネンが1923年に渡米するまでのフィンランド時代にスポットをあてる。建築図面や写真、現存する家具やインテリアの実物展示や資料を通して、彼の活動の軌跡を辿っていくと、フィンランドが歩んだ独立と近代化の歴史とも重なり、やがてデザイン大国となる前の萌芽も確認できる。会場構成は久保都島建築設計事務所が担当。
関連イベントや展覧会の詳細、最新の開館状況は、会場ホームページを参照。
information
「サーリネンとフィンランドの美しい建築展」
会期:2021年7月3日(土)~9月20日(月)
開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
※8月6日(金)、9月3日(金)は夜間開館を予定、20:00まで(入館は19:30)
※4回目の緊急事態宣言発出により、夜間開館は開催中止
休館日:水曜、8月10日(火)~13日(金)
入館料:一般 800円、65歳以上 700円、大学生 600円、中・高校生 400円、小学生以下無料
※障がい者手帳の提示で付添者1名まで無料
主催:パナソニック汐留美術館
問合せ先電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会詳細
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/21/210703/index.html
読者プレゼント
この展覧会のペアチケットを抽選で5組10名様にプレゼントします。
メールタイトルに必ず、『会場名**「***」展 チケットプレゼント』と明記し、送付先の住所・郵便番号・氏名、年齢と、『コンフォルト』の感想もお書き添えのうえ、下記メールアドレスまでお申し込みください(下記[@]のカッコはトル)。
info[@]confortmag.net
応募締切:2021年8月6日(金)