日本を代表する建築家の1人である菊竹清訓(1928-2011)が、群馬県館林市で設計した旧館林市庁舎(現・館林市民センター/中部公民館)にて、企画展示「メタボリズム建築・旧館林市庁舎のかたち -ル・コルビュジエ建築との共通点を探る-」が11月23日より開催される。
旧館林市庁舎(現・館林市民センター/中部公民館)外観(提供:ATELIER GALLERY)
旧市庁舎は1963年の竣工、現在は市の中部公民館として私用されている。築年から58年が経った昨年、国内に現存する貴重なメタボリズム建築である菊竹の代表作を未来へと継承することを目的に、展示イベント「メタボリズム建築と旧館林市庁舎」展が1日限りで開催され、約500人もの来場者数を記録した。これを受けて、今回は5日間に会期が延び、菊竹建築の魅力を改めて伝える。
旧館林市庁舎 内外観(提供:ATELIER GALLERY)
本展では、設計当時の建築図面や菊竹による貴重なスケッチが展示されるほか、イベントのサブタイトルにある「ル・コルビュジエ建築との共通点を探る」こともテーマの1つ。館内には、コルビュジエの代表作として名高い《ラ・トゥーレット修道院》から影響されたとみられるデザインを確認できる。その1つが、旧市庁舎の渡り廊下の開口部で、フランス語で”波状”を意味する「オンデュラトワール」の窓[※]。本展では、これらデザインの関係性を紐解く資料のほか、菊竹が設計した建築空間のためにオリジナルでデザインした1960年代の家具(コトブキのための椅子、都城市民会館のための椅子、バス停のための椅子)も展示される。
※「オンデュラトワール」はコルビュジエと弟子のヤニス・クセナキスが生み出したとされる。菊竹の師にあたる村野藤吾が設計した千代田生命保険本社ビル(現・目黒区総合庁舎)にも見られるデザイン。
旧館林市庁舎 渡り廊下の開口部の外観
左から、菊竹清訓《コトブキのための椅子》、コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンが共同でデザインしたカッシーナ製の1960〜80年代に製造された家具(希少価値が高いブラックカラーシリーズ)、インド・チャンディーガルで使用されていた街灯(3点とも提供:ATELIER GALLERY)
さらに本展では、コルビュジエの設計で知られる、フランス・パリ南部のジャルダン国際大学都市のブラジル学生会館、マルセイユのユニテ・ダビタシオン、インドのチャンディーガルで使われていたヴィンテージの家具、照明、建材なども展示される(一部は販売あり)。
会期中は、日没後に館内照明点灯によるライトアップが行われるほか、11月23日、26日、27日の3日間限定で屋上も見学できる(時間制限あり)。
旧市庁舎と同じ1960年代に菊竹が設計した出雲大社庁の舎(いづもたいしゃちょうのや) や旧都城市民会館などがすでに解体され、菊竹とともにメタボリズムの建築思想を提唱した黒川紀章の代表作〈中銀カプセルタワービル〉も今夏に解体されている。日本の建築史上、重要な建物が失われていくなかで開催される本展は、日本における建築保全の現状や、地方のまちづくりにおける近代建築の文化的価値などについて広く問いかける場としても機能する。
information
「メタボリズム建築・旧館林市庁舎のかたち -ル・コルビュジエ建築との共通点を探る-」
会期:2022年11月23日(水・祝)〜11月27日(日)
開場時間:10:00-17:00
会場:館林市民センター(旧館林市庁舎)5階 講堂・会議室(群馬県館林市仲町14-1)
入場料:無料
主催:館林市役所都市建設部都市計画課
企画:TBRI(東毛建築リサーチ研究所)
協力:ATELIER GALLERY、garage、田部井石材、情報建築、斎藤信吾建築設計事務所、塚本二朗建築設計事務所
問合せ先:館林市役所都市建設部都市計画課都市再生推進係(TEL.0276-47-5150)
館林市ホームページ イベント告知
https://www.city.tatebayashi.gunma.jp/s063/kanko/010/20221018110911.html
中部公民館(館林市民センター)ホームページ
https://www.city.tatebayashi.gunma.jp/k002/