
2025年6月18日〜20日、東京ビッグサイトで「インテリア ライフスタイル2025」が開かれた。3日間で訪れたのは、約15,000人。出展は国内393社、海外90社の計483社(18カ国/地域)にのぼり、最新の技術やトレンドが発信された。海外からも、イタリア、フィンランド、ラトビアなどがナショナルパビリオンを出展し、クオリティの高い家具や建材を披露。なかでもイタリアのパビリオンは「より良い生活のためのデザイン」という理念を打ち出し、15社が参加した。磨き抜かれたクラフトマンシップと洗練されたデザイン、そして環境への配慮を兼ね備えた各社の取り組みを紹介する。
Edimax Astor Ceramiche
エミリア・ロマーニャ州のモデナ近郊に拠点を置く「Edimax Astor Ceramiche」は、創業55年のタイルメーカー。洗練された美意識と最先端のテクノロジーを融合させた高品質な磁器質タイルの製造で知られ、住宅から商業施設まで幅広い空間を彩る多彩なコレクションを展開している。
同社の強みは独自の「3D Shaped Technology」で、天然石や木材、セメントなどの素材感を精緻に表現する。従来の押し型による凹凸加工とは異なり、グラフィック(模様)と凹凸加工を精密に同期させる技術により、見た目だけでなく触った時もリアルな素材感を体感できるのが特徴だ。
また高耐久な釉薬により強度と耐摩耗性も確保し、優れた滑り止め性能も発揮。環境への配慮も重視しており、製造工程での二酸化炭素の削減や、使用する水やエネルギーのリサイクルシステムを整備していることが国際的にも評価されている。
同社のタイルは、日本では30年近く前から流通している。今回、最新のコレクションを紹介してくれたのは、Export ManagerのFabio Andresさん。「デザイン性と機能性、そしてサスティナビリティに配慮して、技術を年々ブラッシュアップしている」と語るよう、極めて精度の高いテクスチュアに、セラミック集積地の矜持を感じる。




FAP CERAMICHE
「FAP CERAMICHE」は、エミリア・ロマーニャ州のモデナを拠点とし、イタリア大手セラミックグループの「Gruppo Concorde」に参画しているタイルメーカーだ。「デザイン×色×素材の表現力」をテーマに掲げ、手仕事とテクノロジーを併せ持つものづくりを打ち出しているのが特徴だ。
その核となるのが、同社独自の「True Touch 技術」という3Dプリンティング技術で、木や石などの自然素材の質感を手触りに至るまでリアルに再現。また手仕事による繊細なニュアンスを忠実に再現したセラミックタイルも主力の一つである。
加えてエリア・マネージャーのDavide Bertoliniさんが紹介してくれたのは、ミラノデザインウィークでも発表した鏡面仕上げのセラミックタイルだ。タイルにメタルを貼って2回焼き込むが、焼成の温度管理にコツがあり、職人技の賜物とのこと。無地のタイルだけでなく、オニキスの質感を再現した「Gemme」シリーズも鏡面に仕上げられる。120×278cmの大判タイルも展開しているので、壁面全体がまるで鏡のように輝くアーティスティックな空間デザインも可能だ。
また、同社のプロダクトは環境プロダクト宣言(EPD)を取得し、製品のライフサイクル全体における環境への影響の可視化していることにも注目したい。





IL GIARDINO DI LEGNO
「IL GIARDINO DI LEGNO」は、無垢のチーク材を中心としたアウトドア・ファニチャーを扱う、トリノの家具ブランドだ。CEOのCristiano Bonoraさんは、製材から家具製作までを扱う一家の出身で、木と家具に関する豊富な経験を活かし、2003年にブランドを立ち上げた。現在ではヨーロッパおよびアジアに生産拠点を持ち、世界40カ国以上に展開。邸宅はもとより高級ホテルやヴィラ、リゾートで採用されている。
家具に主に用いているのはFSC®など森林認証制度に準拠したインドネシア産のチークで、製造過程でも100%自然由来の処理剤を用いるなど、森林管理も含めて環境に配慮した生産体制を整えている。家具デザインのモットーは、人間工学に基づき、そして快適、かつシンプルであること。ヨーロッパの厳しい屋外家具基準をクリアした品質と、熟練の木工技術が調和したプロダクトだ。
「日本は木を尊ぶ伝統が根付いている国。私たちが誇る技術と価値に共感してくれると考えている」とBonora氏は語る。





Sitia
「Sitia」は、2002年にヴェネト州ヴィツェンツァで誕生した家具ブランド。「人間中心のデザイン」という哲学のもと、エルゴノミクスに配慮しながら、厳選された素材を用い、色彩やフォルムに遊び心を持たせた家具が揃う。
デザイン性や職人によるハンドメイド、そして綿密に管理された生産工程もさることながら、代表のEmanuel Battocchioさんが何より大切にしているのは「人間とのつながり(The Human Contract)」だ。
同社ではヴェネト州の地元サプライチェーンを基盤として、コンセプトからプロダクトの製造まですべてをイタリアで手掛けているが、日本では「IL DESIGN」がディストリビューターとして伴走。海を超えて、イメージづくりにはじまり、寸法、素材、仕上げなどのカスタムオーダーまできめ細やかに対応してくれる。
「家具を製作する以上の価値提供をすることが、本物のMADE IN ITALYであり、Sitiaが体現する世界」と語るEmanuelさん。もともとBattocchio家は1977年から住宅やホテル、オフィス用の家具を手掛けてきた歴史をもつ。半世紀近く蓄積されてきたクラフトマンシップが「Sitia」の根底に流れている。






STL Srl / Stilfibra®
「Stilfibra®」は、イタリア・ヴェネト州マロスティカに拠点を置くサステナブル家具のブランドだ。母体は1966年創業の「STL Srl」社で、オリベッティ代理店やオフィスプリンターの販売を手掛けていた。同社の二代目のCEOであるLucia Cumanさんが、サステナブルに注力した活動にも取り組みたいと、同ブランドを立ち上げたのは5年前のことになる。
ブースでも注目を集めていたのが、植物繊維と再生素材を使った椅子「Erbiチェア」だ。食品・農業廃棄物の植物繊維とリサイクルPPをブレンドしたもので、バリエーションは、廃材のカモミール、コーヒー豆の廃殻、葡萄の搾りかす、CO₂吸収力の高いススキの4種類。原材料を彷彿とさせる色だけでなく、香りも堪能できるのも特徴だ。金型は既存を再利用し、椅子に合わせてデザインしたクッションにはシチリア産オレンジ果皮の繊維を使った人工革皮を採用。さらに寿命を迎えた椅子がリサイクルされるプロセスも含めてデザインされている。
売り上げの一部はWomenForFreedomという団体を通じて、ネパールでの教育支援プロジェクト「A Scuola con Chiara」に寄付され、女性の権利向上にも貢献。環境だけでなく人に対してもサステナブルでありたい、というLuciaさんの思いが家具を通じて体現されている。



左から、ススキ、コーヒー、ブドウ。植物繊維の含有量やテクスチュアはそれぞれ異なる。プラスチックに植物繊維を混ぜるのが技術的にも難しかったそう。椅子の脚はメタルとFSC®認証のブナの2タイプが選べる。昇降式・回転式タイプもあり。


VALPAINT
タイルや家具のみならず、建築用塗料でも高い評価を受けているイタリア。1988年に創業した「VALPAINT®」は、イタリア屈指の技術力を誇る塗料メーカーとして国際的に高く評価されている。
その特徴は、水性塗料でありながら、錆やモルタル、スタッコ、ベルベッド、メタリック、さらには泡立つ海面に至るまで、重厚かつリアリティのあるテクスチュアを再現できること。本物のような意匠性の高い質感を塗装で手軽に実現できるのがうれしい。
テクスチュアと色数が豊富で、ラインナップによっては屋外でも使用できる。壁・天井だけでなく、床や什器にも塗装できるので、空間デザインの幅が広がる。また、水性塗料で環境にも優しく、生産段階の環境負荷低減に積極的に取り組んでいるのも特徴だ。
日本ではカラーワークスが総代理店で、11種類のテクスチュアと1200種類以上のパターンをつくりだすことが可能。輸入したオリジナルのツールを使って模様を施し、塗料ごとに独自の技法がある。施工認定者が手掛けることになり、「VALPAINT®」テクニカル認定コースも開講されている。




つくり手自身が来日し、ものづくりに込めた思いや背景を直接語ってくれたイタリアパビリオン。とりわけ印象に残ったのは、どの企業も自社製品の品質だけでなく、サステナビリティへの取り組みを自然体で語っていた点だ。上質な素材やイタリアの伝統的な技術だけでなく、製造プロセスそのものが環境配慮を体現しており、それが製品の魅力としてしっかり伝わってくる。
今回の出展企業の中には、4月に行われた世界最大級の国際見本市「ミラノサローネ」にも参加したブランドがあったが、それでも「日本で直接語りたい」と足を運んでくれた背景には、「日本は本物の価値を理解してくれる」という信頼があるという。「すぐに売れなくてもいい。価格が高くても、良いものだと分かってもらえる」との考えには、日本に対する深い共感と敬意が感じられた。
今、日本は物価高や不安定な社会情勢に悩まされているが、こうした真摯なものづくりの姿勢は来場者にきちんと届き、建築業界・インテリア業界にとって、新鮮な刺激となったのではないだろうか。来年のイタリアパビリオンも、さらに多彩な顔ぶれとなることを期待して、歴史ある技術と未来への責任を両立させるブランドの挑戦を見届けたい。

取材・文/植林麻衣 会場写真/建築資料研究社 製品写真は各社提供
協力/イタリア大使館貿易促進部
