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ケンチク学ビバ Vol.65|芝浦工業大学

芝浦工業大学 建築学部 建築学科
教授 志手一哉

 取材・文/編集部
 コンフォルト2025年6月号 no.203より

 芝浦工業大学の前身である東京高等工商学校が設立されて、建築工学科が開設されたのは1927年のこと。49年に芝浦工業大学が設立され、工学部に建築学科と建築工学科が含まれた。2017年には建築学部が新たに設けられて、建築学科が開設。これにより工学部の建築学科と建築工学科、デザイン工学部のデザイン工学科が統合された。
 建築学部建築学科は、APコース(先進的プロジェクトデザインコース)、S Aコース(空間・建築デザインコース)、UAコース(都市・建築デザインコース)の3コースに分かれてスタートする。各コースで基礎的な建築技術と教養を習得した後に、専門科目を履修する。3年次からはさらに専門性を深めていき、4年になると研究室に配属される。

建物をマネジメントから捉えて
生産と維持管理までを考える

 志手一哉さんは、「建物の企画段階から維持管理、解体まで、構造や設備のエンジニアリング以外の部分を中心に研究しています」と話す。志手さんの建築生産マネジメント研究室では、建物を効率よく建設し、長きにわたって愛され続けるようにするために必要なことに着目。主なテーマとしてはコンストラクションマネジメント(CM)、プロジェクトマネジメント(PM)、発注、施設の管理・活用(ファシリティマネジメント/FM)、そしてBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)がある。
 特にBIMを用いて建物の設計、施工、メンテナンスの生産性を向上させるというテーマでは、現状の課題を分析したり、欧米や東南アジアでの動向を調べながら、最先端の技術や考え方を研究する。
 「最近では、工場で製造した部材を現場に運び、組み立てるDfMAと呼ばれる設計手法が世界的に注目されています。職人不足が深刻になるなかで、現場での作業を少人数で行うことが求められている」
 また、建物の価値評価や維持管理をいかに効率的に行うかに社会の関心が高まっており、研究を通じて建物のライフサイクル全体で無理なく効果的に管理する方法を探っている。

変節を迎える建設業界で
国や大学を超えた共同研究

志手研究室の構成は、4年生が約10人、大学院生が約20人。研究室では毎年3月に春合宿として、新4年生を含めてメンバー全員でフリーディスカッションを行う。そこで4年生は研究室の活動の方向性や雰囲気を共有し、6月ごろまでに自分のテーマを決定する。「基本的には、学生には自分でテーマと計画を考えてもらいます」と志手さん。「世の中のITの動向に合わせて、若い学生たちの考え方も進化し成長しています。私が学ぶことのほうが増えていますね」。 BIMを含め、日進月歩で発展し、変革しつつある建設業界。「設計段階ではBIMの導入が進んでいますが、施工後の施設運営段階でどのように活用するかは、まだ多くの企業で進んでいないのが現状」 志手研究室ではプログラマーと共同でさまざまなツールを開発することや、国を超えた学生同士の交流、また企業との共同研究にも取り組んでいる。「建築生産の真理を追求したい学生は一緒に勉強しましょう」と志手さんは呼びかける。

2025年3月にマレーシアのUniversiti Tunku Abdul Rahmanで行われたワークショップ。キャンパス内にある作業施設の改修提案をした。

建築生産・維持管理分野における志手先生の活動
建築生産の体系化についての研究
建築生産プロセスには、多数の関係者が複雑に関与している。それらの関係を整理して、各接点で不都合が生じないように、かつより合理的であるように、全体をマネジメントしていくことが求められる。建築生産プロセスの流れと各種マネジメントの関係を整理すると上図のように表すことができる。それを概観したうえで、主に設計と施工の段階について、その要点となる部分を説明した教科書として『現代の建築プロジェクト・マネジメント』(彰国社)を執筆した。

建築生産プロセスの流れと各種マネジメントの関係

『現代の建築プロジェクト・マネジメント』では「建築プロジェクトの概況」「建築プロジェクトの現状」「建築プロジェクトの展望」という3部構成で、複雑化する建築産業の課題を読み解く。

維持管理に向けた建物情報のデジタル化
ファシリティマネジメントの業務は、運用、改修、メンテナンスなど多岐にわたり、各々の業務で必要とされる建物情報の形式や詳細度が異なる。例えば、建物の日常の点検業務に3次元データは不要だが、修理や災害復旧などの緊急時には、写実的な詳細度を持つ3次元データがあると便利である。建物の運用などで用いる3次元データをBIMソフトを使わずに作製するために、レーザースキャナで撮影した点群データをWebプラットフォームで連携する「点群BIM」の研究開発を進めている。

建物について「点群BIM」の各画面を並べた状態。写実的な3次元データをBIMソフトで作製するには多くの時間と費用がかかるため、レーザースキャナで撮影した点群データをさまざまなアプリやデータベースと連携させて点検などに活用する研究。

デジタル化で進化する学生の研究
画像から3D空間を作成する
建物の建設段階や運用段階の生産性向上を目指し、画像から3次元の空間を作製する技術を研究。例えば、建設現場のなかで作業者などの位置情報を把握したい場合に、センサーを設置するのでは手間がかかってしまう。そこで、ヘルメットなどに取り付けるカメラの画像データから把握していくシステムを構築する。

BIM上で研究室を描き、その空間で撮影した画像でどこから撮影したかを推定
撮影した画像をもとに、現実の研究室を3次元で再構成した
STUDENTS’VOICE 伊藤純平さん(修士2年)

建築も情報系のことも好きで、学部時はプログラミングを学び、建設業界での効率化をテーマとした企業でエンジニアもしていました。建築と情報を合わせることを研究したいと、大学院で志手研究室に入り、今後はデジタルツインの構築のなかで、要素技術の開発と研究をしていくつもりです。

建物の価値を利用者から見る
「スマートビル」などの建物が、利用者の視点からは何に価値があるとみなすのかを分析し、建物には何が求められているのかを考察。アンケート調査を統計的に分析することで、傾向や施策をまとめた。さらに求められる建物の価値を踏まえ、これからのスマートビルやスマートシティが目指すべき方針を示す。

建物の価値に関する項目の重要度(5段階)を示した図(左から住宅、職場、公共施設)
建物の機能で重要視される要素についての図
STUDENTS’VOICE 小島瑚子さん(修士2年)

建築を学ぶなかで、建物がつくられる過程や使われること、また新しいことができるデジタルへの興味が高まり、志手研究室を選びました。先生は研究に打ち込んでいますが、学生には優しく指導くださっています。学生がどう考えているかを引き出して、それをベースに発展させてくれるように思います。

BIMモデルをAIで分析
画像からさまざまな情報を抽出できるCNNという画像認識のモデルは、基本的には選択肢を事前に設定し、どれに該当するかを回答する。その際に、数値情報だけを出力するように変更し、読み込ませる画像とデータベースの画像の数値を照合して最も近いものを考察。BIMモデルをAIで効率的に分析することに役立てる。

左端が検索対象の画像で、右3点が検索結果を示し、対象との一致度を数値化する

ディープラーニングモデルが画像の特徴をどのように学習したかを2次元、3次元のグラフとして可視化したもの

STUDENTS’VOICE 武石裕貴さん(修士1年)

BIMソフトを初めて授業で触ったときに感動し、最先端のことを取り入れて研究することに惹かれ、志手研究室に入りました。建設分野でのAI活用に興味があり、論文ではプログラムを組める学生と一緒に分析しました。修士課程では、ChatGPTのような言語モデルを使った自動化に焦点を当てる予定です。

建物緑化と修繕周期の関係を考察
建物緑化が建築物の修繕周期に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした研究。特に、緑化量(屋上緑化や壁面緑化の規模)と修繕周期(建物の防水工事や外装の劣化の進行速度)に着目し、これらの関係を定量的に分析。建物緑化量に基づき、緑化率0.58を超えると「超緑化建築」に分類されるという指標を提示した。

「アクロス福岡」を対象として、ヒアリング・アンケート調査を実施

「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」

「新目黒東急ビル」

STUDENTS’VOICE 松浦大成さん(修士1年)

卒業後の就職を踏まえたときに、BIMが必須だろうと研究室を選びました。建物の緑化にも以前から興味があったことから、建物の維持管理とつなげた研究をしています。志手先生は授業では静かな印象だったのですが、研究室の説明では「意欲のある人を募集」と熱い側面を見せていたことに惹かれました。

Kazuya Shide

1992年国立豊田工業高等専門学校建築学科卒業後に竹中工務店に入社し、施工管理、生産設計、研究開発に携わる。2013年千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻博士後期課程修了。14年から芝浦工業大学にて建築生産マネジメント分野の教育研究に従事する。主な専門分野は建築生産、ファシリティマネジメント、BIM(Building Information Modeling)。博士(工学)、技術経営修士(専門職)、一級建築士、一級施工管理技士、認定ファシリティマネジャー。

芝浦工業大学建築学部建築学科
東京都江東区豊洲3-7-5tel 03-5859-7000(代表)
https://www.shibaura-it.ac.jp/ faculty/architecture/

コンフォルト2025年6月号 No.203より

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