器やタイルなどの生産地、岐阜県の東濃地方で「土から生える ART in MINO」展が開催中だ。
会場は窯場跡、旧釉薬工場、軍需工場跡地などで、多治見市、土岐市、瑞浪市の6カ所に点在している。そこでは、それぞれの場にインスピレーションを得た作家たちがインスタレーションを繰り広げている。来場者は、その場所におけるかつての人々の営みに思いを馳せ、同時に作家たちが発するメッセージを受け取る。パフォーマンスやワークショップ、トークイベントも開かれている。
じつは今展は、2008年の第1回に続く2度目の開催だ。当時の会場は瑞浪の採土場、多治見の窯場跡などで、いくつかは今回も使われた。
前回は実行委員、今回は芸術監督をつとめた安藤雅信さんは当時、「今回のaim展では街や村を活性化する目的ではなく、産地としての現状の場の魅力に気付き、翳りを見せる美濃焼産業界への刺激と、『作品』ではなく『焼き物』を外側から見つめ直す契機になればと企画した。そこで有効なのが現代美術の批評性である。そこに込められた一種の毒は、原因をつくる産業界だけに向けられているのではなく、ものを享受する側にも向けられているからだ。」と書いている(『コンフォルト』2009年2月号)。
それから16年が経った。産地の状況も、「土」や「やきもの」への人々の見方も変わりつつある。地球資源は有限であること、人間が環境や生物多様性を破壊し続けており、これまでとは考え方もやり方も変えなくてはならないことを意識せざるを得なくなった。第1回目の主旨は、より鮮明にいまに引き継がれたといえるだろう。
会場を巡るたび、土が変幻自在なことに気付かされる。文字通りどろどろになり、ある形を成し、乾いて硬くなり、焼かれて強くなり、ときには粉となって吹き飛ぶ。自然の循環に土は欠かせない。そう考えると、土そのものに記憶が宿っているような気がしてくる。
ともすれば忘れがちだが、大地を構成し、植物や生物を育む土は、太古から常に私たちの暮らしのそばにあった。時代と共に変化してきたが、いつでも、いまも私たちのまわりには、土からつくられたものがたくさんある。ものの根源へと遡ること、ものの見方に新鮮さを与えること。作品たちからは、その両方が感じられた。
今展は、第1回目を知らない若い世代の要望も受けて開かれたのだという。たしかにいま、私たちには土と向き合うことが必要なのだ。
(編集部・多田君枝)
会期 2024年10月18日(金)~ 11月17日(日)の金・土・日・祝日 16日間
開催時間 10:00 〜 18:00(各会場により異なる)
料金 前売り ¥1,800 一般 ¥2,000 / フリーパス ¥3,800 / 学生 ¥1,000
参加作家 伊藤慶二、坂田和實、藤本由紀夫、小島久弥、安藤雅信、上野雄次、内田鋼一、 森北伸、安藤正子、沓沢佐知子、桑田卓郎、 迎英里子、アオイヤマダ ほか
会場 高田窯場跡(多治見市) ギャルリ百草と百草の森(多治見市) 小山冨士夫 花の木窯(土岐市) 下石工組 旧釉薬工場(土岐市) 旧地球回廊 軍需工場跡地(瑞浪市) 中島醸造(瑞浪市)
芸術監督 安藤雅信 ( 陶作家/ギャルリ百草 主宰 )
監修 高橋綾子 ( 名古屋造形大学 教授 )
アドバイザー 森北伸 ( 愛知県立芸術大学 教授)
実行委員長 水野雅文 ( 図濃代表 )
主催 土から生える実行委員会 (一社)セラミックバレー協議会
後援 多治見市 瑞浪市 土岐市