大阪を拠点に、植物園の温室など、緑地や自然環境と共存する建築作品を数多く設計した建築家、瀧光夫(たきみつお 1936-2016)の業績を振り返る、初めての展覧会(企画・監修:松隈洋、笠原一人、三宅拓也)。
なお、本展は、2020年3月23日に初日を迎え、6月6日までの会期で開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、2020年4月9日より臨時休館に入ったまま、9月6日時点で再開が発表されていない。このため、会場である京都工芸繊維大学美術工芸資料館が今年6月末に解説したYouTube公式チャンネルにおいて、本展の企画・監修者であり、同館の松隈洋教授による展覧会解説動画(再生時間19分)が、7月28日より公開されている。
2020/07/28公開「京都工芸繊維大学美術工芸資料館《建築家・瀧光夫の仕事 緑と建築の対話を求めて》展覧会紹介」解説:松隈洋(京都工芸繊維大学美術工芸資料館教授)
瀧光夫が生まれ育ったのは、尾道市向島。父親が赴任した広島文理科大学(現・広島大学)附属臨海実験所があり、海と野山に囲まれた豊かな環境の中で、設計者となったのち、水平線を強調する作風や自然と建築との関係を大切にする独自の作風が育まれたとみられる。1955年に京都大学工学部建築学科に入学。大学院修了後にコロンビア大学大学院に約1年間留学。フランク・ロイド・ライト(1867-1959)や、エーロ・サーリネン(1910-1961)の建築や、当時最先端のモダニズム建築に触れつつ、欧米の西洋庭園を精力的に見て歩いたという。帰国後は日本万国博覧会(1970)の「お祭り広場」の実施設計に携わり、1972年に瀧光夫建築・都市設計事務所を設立。大阪を拠点としながら、全国各地に10を超える温室や植物園を設計した。共同設計を含めた主な作品に、《愛知県緑化センター》(1975)、《福岡市植物園》(1980)、《服部緑地都市緑化植物園》(1983)、《水戸市植物公園》(1987)などがある。一連の鑑賞温室の設計が評価され、1988年に日本造園学会賞を受賞、さらには、1992年に《シャープ労働組合研修レクレーションセンター(アイ・アイ・ランド)》(1990)で日本建築学会作品賞を受賞している。瀧は、造園と建築の両分野で表彰された最初の建築家である。
瀧の没後、アトリエと自宅には、手描きの設計原図やスケッチ、草稿など、大量の資料が遺されていたが、同大学美術工芸資料館に委託され、整理を終えた一部の資料が本展で初めて公開される。瀧光夫の業績を改めて紹介すると共に、緑と建築との対話を軸に、瀧が求めたランドスケープ・デザインとはどのようなものだったのかを読み解き、その豊かな建築世界と環境デザイン思想を通して、私たちの身のまわりの自然環境と建築・都市のあり方について再考することを試みる。
本展関連イベントとして、4月25日(土)に同大学の60周年記念館・ホールにて、記念シンポジウム「瀧光夫の人と建築を語る」が予定されている(定員180名、入場無料・申し込み不要)。
展覧会は、再開の準備が整い次第、再オープンし、あわせて会期も延長される見込み(詳細未定)。最新の情報は、会場ホームページを参照のこと。
information
*以下はコロナ禍以前のスケジュールです
展覧会名:建築家 瀧光夫の仕事-緑と建築の対話を求めて-
会期:2020年3月23日(月)〜6月6日(土)臨時休館中、会期延長予定
開館時間:10:00-17:00(入館は16:30まで)
休館日:日曜・祝日
*新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、4月9日(木)より臨時休館中
*最新の情報は会場ホームページを確認してください
会場:京都工芸繊維大学 美術工芸資料館(京都府京都市左京区松ヶ崎橋上町)
料金:一般 200円、大学生 150円、高校生以下無料
*京都・大学ミュージアム連携所属大学の学生・院生は学生証の提示により無料
*身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳または被爆者健康手帳をお持ちの方及び付添の方1名は無料(入館の際は、手帳を提示すること)
電話番号:075-724-7924
会場ホームページ:http://www.museum.kit.ac.jp