世田谷美術館「作品のない展示室」

今春以降、新型コロナウイルス感染症の拡大により、日本を含めた世界中の美術館では、開催を予定していた展覧会だけでなく、準備にも支障が生じている。海外から作品を借用することが困難となり、スケジュールの見通しを立てにくい状態となっている。どの美術館においても、美術館としての在り方を問い、展覧会や関連イベントなどの事業を見見直しを迫られている。そのような状況のなか、世田谷美術館では「作品のない展示室」と題した企画を実施する。

〈世田谷美術館〉外観
〈世田谷美術館〉外観

同館は、建築家の内井昭蔵(1933-2002)が設計し、1986年に開館した文化施設。緑豊かな砧公園のなかに美術館を設計するにあたり、内井昭蔵は、「生活空間としての美術館」、「オープンシステムとしての美術館」、そして「公園美術館としての美術館」をコンセプトとした。ゆえに、世田谷美術館には多くの窓があり、来館者を迎えるのも正面玄関だけではない。周囲の環境との一体化を目指した、極めて開放的な建物となっている。
その一方で、作品の保護や演出上の理由、作家の意向などから、展示室では窓を締め切り、外光を遮って展示することが多い。下の内観写真のような眺めを目にする機会はほとんどないと言える(世田谷美術館の開放性を実感するのは、開館当初から営業している館内のレストラン「Le JARDIN(ル・ジャルダン)」を利用したときが顕著であろう)

〈世田谷美術館〉内観
〈世田谷美術館〉内観

今回の「作品のない展示室」では、絵画や彫刻などは展示されない。見ることができるのは、開館から今日まで、展覧会関連イベントなどで開催された、音楽やダンスなどのパフォーマンスの記録映像や記録写真のスライドショー。ユニークな建築空間と館外の自然環境を活かしつつ、そのときどきの展覧会に合わせて開催されてきたもので、約400本のなかから40本を厳選してプロジェクションしたものを、「建築と自然とパフォーマンス」として特集展示する。開催時のチラシなどのアーカイヴ資料もあわせて紹介。美術館としての機能が、単に収集し、保存し、展示するだけではなく、音楽、演劇といったパフォーマンスなど、さまざまなジャンルの総合化の機能も重要視する施設であることを再認識するとともに、建築家・内井昭蔵による設計コンセプトを、今の私たちに伝えてくれる。観覧は無料。

 

Information

タイトル 世田谷美術館「作品のない展示室」
日時 2020年7月4日(土)〜8月27日(木)10:00-18:00
休館日:月曜(但し、8月10日[月・祝]は開館)、8月11日(火)
会場 世田谷美術館 1階展示室(東京都世田谷区砧公園1-2)
料金 観覧無料
電話番号 ホームページ参照
本展観覧上の注意
(世田谷美術館より)
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/news/entry.php?id=nw00590
会場URL https://www.setagayaartmuseum.or.jp

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