隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則

建築家の隈研吾(1954-)の大規模展。昨年11月から今年にかけて、高知、長崎を巡回し、東京が最後となる。なお、本会場となる東京国立近代美術館において、大規模な建築家の個展が開催されるのは今回が初めて。

タイトルに含まれる「ネコ」とは、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大するなかで、今の我々に必要なのは、高度経済成長期のように都市を上から俯瞰するのではなく、都会の路地や隙間を自由に歩くネコの視座であり、建築という閉じられたハコの外に出て、人間よりももっと低い、地べたに近い下からの視点で都市を眺め、物事を考え、未だコロナ禍にある日々の生活を見つめなおすべきではないかという、隈氏からのメッセージが込められている。

隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則

会場は、有料の第1会場と、無料で入場できる第2会場の2つが用意されているのも特筆点。無料エリアである美術館ロビーフロアと、前庭にも、それぞれ展示がある。
第1会場では、国内外に数多ある隈氏が手がけた建築作品の中から、公共性の高いものを中心に68件を選び、模型やモックアップ、写真などで紹介。配置は年代順ではなく、「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」という、隈氏が考える「5原則」によって分類されている。作品は、隈氏が設計に携わった《国立競技場》や、新潟県長岡市の交流型市役所《アオーレ長岡》など、大型の公共施設から、吉祥寺・ハモニカ横町の一角でリノベーションされた居酒屋まで、規模の大小を取り混ぜているのも大きな特徴。その全てに、隈氏自身による作品解説が付く。
また、隈研吾建築都市設計事務所による模型などの展示のほかに、高知県梼原町の作品群を、写真家で映像作家の瀧本幹也が撮り下ろしたインスタレーションや、藤井光による《アオーレ長岡》の映像インスタレーション、マクローリン兄弟による《V&Aダンディー》の映像作品も見ることができる。

隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則

無料展示の第2会場は一転、映像が中心。ネコの視点から都市での生活を見直すリサーチプロジェクト《東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則》では、隈氏が居住する東京・神楽坂で暮らす二匹のネコにGPSなどを取り付けて撮影・制作された映像などが上映され、彼らの”視点”を疑似体験できる(プロジェクト名にある数字はそれぞれ「ニャンニャン」「ゴロゴロ」と読むのが正式。また、本展のタイトルも「ネコ」の部分は「猫の絵文字😺」が正式な表示)
そのほか、「復興と建築をめぐるインタビュー」と題したコーナーでは、南三陸町と熊本で収録された関係者へのインタビューと、隈氏本人へのインタビューも上映されている。

隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則

information

隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則
Kuma Kengo: Five Purr-fect Points for a New Public Space
会期:2021年6月18日(金)~9月26日(日)
開館時間:10:00-17:00(金曜・土曜:10:00-21:00) / 入館は各日とも閉館30分前まで
休館日:月曜(但し、7月26日、8月2日、9日、30日、9月20日は開館)、8月10日(火)、9月21日(火)
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー(東京都千代田区北の丸公園3-1)
入場料:一般 1,300円、大学生 800円、高校生以下および18歳未満、障害者手帳を提示の方とその付添者1名は無料
※同時時開催の所蔵作品展「MOMAT コレクション・スペシャル」およびコレクションによる小企画「鉄とたたかう 鉄とあそぶ デイヴィッド・スミス《サークルⅣ》を中心に」は、入館当日に限り、本展の観覧料で観覧可能
※新型コロナウイルス感染症拡大に伴う政府・東京都の要請次第では、スケジュールが変更される場合あり

問合せ先電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)

東京国立近代美術館 公式ホームページ
https://www.momat.go.jp/

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