NUNO須藤玲子氏の特別展示「サーキュラー・デザイン ― kibiso はつづく ―」

山形県鶴岡市羽黒町に現存する明治期の建築物、松ヶ岡開墾場二番蚕室の2階を会場に、テキスタイル・デザインスタジオNUNOを率いる、テキスタイルデザイナーの須藤玲子氏による特別展示「サーキュラー・デザイン ― kibiso はつづく ―」が、2021年9月18日より開催されている。

須藤玲子氏特別展示
会場風景 Photo Masayuki Hayashi

鶴岡は、養蚕から製糸・製織・精練・染色・縫製までの工程を域内に有する、世界でも類をみないシルクの産地。その歴史は、1872年(明治5年)に戊辰戦争で敗れた旧庄内藩士たちが、松ヶ岡の地で「刀を鍬に」持ち替えて桑畑を拓き、養蚕をスタ−トしたことに端を発する。本展会場はその拠点となった建物群のひとつ。

国内では現在、2カ所だけとなった製糸工場のひとつ、松岡製糸を2007年に訪れた須藤氏は、蚕が繭をつくる際に最初に吐き出す糸である「きびそ」と出会い、新たなテキスタイルの可能性を思いつく。現地の生産者らの協力などを得て、NUNOのメンバーとともにつくりだしたのが、本展で紹介する「kibiso」である。

須藤玲子氏特別展示
《きびそ 縞と筋》2018 Photo by Sue McNab

「kibiso」を使ったテキスタイルは、独特の張りと天然の保湿性、抗菌性、紫外線カット効果などを備え、材料を無駄なく活用しながら高いデザイン性と機能性を有する。「kibiso」は、繊維産業の大量廃棄が問題となる昨今、海外からも注目を集め、アメリカのクーパーヒューイット博物館、イギリスのビクトリア&アルバート博物館に永久保存されているほか、現在も複数の美術館から展覧会の要請が寄せられている。

須藤玲子氏特別展示
デザイン画や試作品など制作過程を紹介する展示

鶴岡発の「kibiso」を紹介する本展会場では、「kibiso」を中心に、さまざまな表情のテキスタイル29点が天井から吊るされ、来場者はその間を自由に歩いて展示を鑑賞できる。場内のショーケースには、須藤のデザイン画や試作品などが展示され、創作プロセスの一端も明らかに。
鶴岡のシルク産業に携わる人々の情熱と高い技術力との出会いによって生まれた、展示の数々を通して、サステナブルなテキスタイルの世界に触れることができる。

須藤玲子氏特別展示
製糸工場で発生する副産物「おがらみちょし」 Photo by Keiko Matsubara

須藤氏はさらに、鶴岡にて「kibiso」に続く新しいテキスタイルの開発にも着手している。絹の製糸工場で発生する細い金属管にからまった糸の副産物「おがらみちょし」を活用したもので、シート状に裂くことができるこの素材を用いたテキスタイルも本展では披露される。

須藤玲子氏特別展示
会場風景 Photo Masayuki Hayashi

information

須藤玲子氏特別展示「サーキュラー・デザイン ― kibiso はつづく ―」
会期:2021年9月18日(土)〜 10月17日(日) 12月26日(日)まで会期延長
休館日:水曜
開館時間:9:00-16:00
会場:松ヶ岡開墾場 二番蚕室 2階(山形県鶴岡市羽黒町松ヶ岡29)
入場:無料
主催:鶴岡市
共催:松ヶ岡開墾150年記念イベント実行委員会 / 鶴岡「サムライゆかりのシルク」推進協議会
後援:羽黒町観光協会

展覧会詳細
https://tsuruoka-matsugaoka.jp/news/1592/

関連イベント

トークイベント「シルクの可能性と未来 松ヶ岡から世界へ」
開催日:2021年9月18日(土)14:00-16:00 終了
出演:須藤玲子氏、中山ダイスケ氏(東北芸術工科大学学長 日本遺産アドバイザー)
ファシリテーター:佐藤暁子氏(フリーアナウンサー)
▼鶴岡市公式YouTubeチャンネルにてアーカイブ動画配信中
https://youtu.be/rDJsBMo3Jq4

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