1910年代から30年代のヨーロッパを中心に、各地で現れたさまざまな「モダン」のかたち。これまでジャンルに分かれて紹介されることが多かったモダンデザイン、装飾芸術、ファッションを一堂に集め、相互の関係性にもスポットをあてた企画展「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」が、島根県立石見美術館にて開催されている。
1914年に勃発した第一次世界大戦を挟むこの年代は、機能主義に基づく「モダニズム」が主な潮流だったとみなされている。その一方で、大衆消費社会が進展したこの時代、装飾にも価値が置かれた「モダニティ」の痕跡を同時にみることができる。この2つは対立軸のようでいて、注意深く観察すると、いくつもの「モダン」が内包され、複雑に関係しながら、ともに濃密な時代をつくり上げていった。
フランシス・ジュールダン《ランプ》 1920-21年 ポール・エリュアール歴史美術館、サン・ドニ
当時の作家たちは、今日のようなインターネットこそ存在しないものの、リアルタイムに近い速さで情報を共有し、国やジャンルを越えて”同期し合っていた”と考えられる。その領域は、絵画、彫刻から、家具、食器、洋服、それらを収める建築や都市まで、いわば、私たちの生活空間、身体活動全般におよんでいる。
例えば、建築家のヨーゼフ・ホフマンとデザイナーのコロマン・モーザーによって設立されたウィーン工房は、フランスのファッションデザイナー、ポール・ポワレと刺激し合い、建築家で室内装飾家のロベール・マレ=ステヴァンなど同国のモダニストにも影響を与えていた。彼らの生活全般への眼差しは、また、日本で新しい生活様式を模索した 森谷延雄や斎藤佳三らにも共有されていく。
同時主義絵画で知られるソニア・ド ローネーは、ファッションの仕事に専心し、建築、家具デザインを手がけたルネ・エルブストらモダニストは、都市を彩るショーウィンドウデザインに大きな関心を寄せた。そして、1919年にドイツで開校したバウハウスでは、女性作家が織物に新たな光をあて、また同校を離れた作家たちが、同時期に開校したブルク・ギービッヒェンシュタイン美術工芸学校を舞台に応用芸術教育に取り組むことになる。
また、フランスでは、ロベール・マレ=ステヴァンらが中心となり、1929年に現代芸術家協会UAMを結成。ドイツ・バウハウスが弱体化するこの時期に、ル・コルビュジエやシャルロット・ぺリアンらによって、フランス独自のモダンデザインが展開された。
アイリーン・グレイ《トランサット・チェア》1927年 織田コレクション／北海道東川町
世界が一気に同期する、その最初にして最大級の歴史上の転機となる第一次世界大戦の前後で、急速に変化していく社会のなかにいた作家たちは、ときに交わり、ポリフォニー（polyphony）のように共鳴しながら、それぞれが「モダン」のかたちを追求していった。その膨大な軌跡を、国内外の美術館や企業、コレクターらが所蔵する貴重なコレクション約400点で紹介する（会期中、一部展示替えあり）。
会期中の10月8日（土）、10月23日（日）、11月3日（木・祝）、11月20日（日）には、会場にて、担当学芸員による展示解説（ギャラリートーク）も開催される。
関連プログラムの詳細は、島根県立石見美術館および企画展特設サイトを参照。
information
企画展「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」
会期：2022年9月17日（土）～11月28日（月）※前後期で展示替えあり
前期：9月17日（土）〜10月24日（月）
後期：10月26日（水）〜11月28日（月）
会場：島根県立石見美術館 展示室C・D
所在地：島根県益田市有明町5番15号 島根県芸術文化センター「グラントワ」内
開館時間：9:30-18:00（入場は17:30まで）
休館日：火曜
観覧料（※企画展のみの場合の料金）：一般 1,200円、大学生 600円、小中高校生 300円
主催：島根県立石見美術館、しまね文化振興財団、中国新聞社、日本海テレビ
共催：中日新聞社
特別協力：東京国立近代美術館、東京藝術大学、ミサワホーム株式会社
協力：日本航空、ヤマト運輸株式会社
後援：芸術文化とふれあう協議会
助成：一般財団法人地域創造
島根県立石見美術館 ホームページ
https://www.grandtoit.jp/museum/
企画展特設サイト
https://www.grandtoit.jp/museum/functional_and_decorative_polyphony
読者プレゼント
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応募締切：2022年10月16日（日）
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