TOTOギャラリー・間にて、運営委員を務める塚本由晴、千葉 学、セン・クアン(Seng Kuan)、田根 剛の4氏をキュレーターに迎えて、企画展「How is Life?――地球と生きるためのデザイン」が10月21日より開催されている。
気候変動や社会格差など、私たちを取り巻く障壁に風穴を開け、かつ”成長を前提としない繁栄”のあり方を、広義の建築やデザイン、実験的な取り組みなどを通じて提示している古今東西のプロジェクトを紹介し、見るものに「How is Life?」と問いかける。
Capital Agricole
SOA / Augustin Rosenstiehl, architecte | フランス、パリ、アルスナル建築博物館 | 2018 ©Yann Kebbi
How is Life?
産業革命以降手に入れた生産力を背景に、成長を是としてきた人類の活動は、プラネタリー・バウンダリー[*1]を超え、気候変動や南北格差をもたらし、声をあげることのできない生物や将来世代を搾取し続けている。その対応策として、成長の原動力となった産業や便利な暮らしを維持しつつ環境負荷を低減させる行動がSDGsとして推奨されているが、事態はより深刻で、持続的成長ではなく成長なき繁栄[*2]を本気で検討しなければならないところまで来ている。そのためには産業分野だけでなく、暮らし自体を見直し、その構成要素の1つひとつを、地球に負荷をかけない方向に転換していかなければならない。
しかし、産業からサービスを買うことに慣れてしまった我々は、自らの手で衣食住やエネルギーを獲得するスキルをもたず、また産業社会的連関による包囲網はそこからの逸脱を容易には許さない。20世紀後半につくられた生産―消費―廃棄の想定を定着し続けてきた構築環境の中に暮らしていると、その想定を疑うことも容易ではない。そこで培われた自画像は、同じ想定に基づく構築環境や暮らしを再生産してしまう。その反復から抜け出して、成長なき繁栄を選ぶのならば、我々はどう生きるか? 建築が人々の暮らしをよりよくすることに奉仕するものであるならば、そうした包囲網を障壁として発見し、挑んでいくことから、建築的営為を始めるべきだろう。その時話し合いのテーブルにつくのは、今ここにいる自分達だけでなく、立場の弱い人、地球の別の場所にいる人、未来の人、そしてヒト以外の生物かもしれない。
「How is Life?」という、彼ら、そして私達自身への問いかけを、建築展という形にする試みに、ご期待あれ。TOTOギャラリー・間 企画展「How is Life?」キュレーター:塚本由晴、千葉 学、セン・クアン、田根 剛
*1.プラネタリー・バウンダリー
Rockström, Johan, et al. “A safe operating space for humanity.” Nature, vol. 461, no. 7263, 24 Sept. 2009, pp. 472+.
*2.成長なき繁栄
Tim Jackson (2009). Prosperity without Growth. Earthcan.(ティム・ジャクソン 田沢恭子訳『成長なき繁栄 ―地球生態系内での持続的繁栄のために―』一灯舎、2012年)
本展キュレーターの4氏(上段左上より時計まわりに:塚本由晴、千葉 学、田根 剛、セン・クアン)©Anna Nagai
本展アシスタントキュレーター:平尾しえな、アナスタシア・ゴリオミティー(東京工業大学大学院塚本由晴研究室)
展示デザイン:アリソン理恵(ARA)、飯田将平+下岡由季(ido)
information
TOTOギャラリー・間 企画展「How is Life?――地球と生きるためのデザイン」
会期:2022年10月21日(金)~2023年3月19日(日)
開館時間:11:00-18:00
休館日:月曜・祝日(2023年2月11日[土・祝]は開館)、年末年始休業期間(12月26日[月]〜2023年1月9日[月])
会場:TOTOギャラリー・間(東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F)
問合せTEL.:03-3402-1010
入場料:無料
入場方法:予約制(TOTOギャラリー・間 ホームページにて受付)
※新型コロナウイルス感染拡⼤防⽌対策を実施
TOTOギャラリー・間 ホームページ(入場予約はこちら)
https://jp.toto.com/gallerma