日本美術の特色のひとつとして、古来より草木や花、鳥や虫などの生き物たちへの深いまなざしが挙げられる。なかでも虫は重要なモチーフであり、現代の生物学において昆虫として分類されるまでは、蜘蛛や蛙、蛇などの小さな生き物たちも「虫」として親しまれ、物語や和歌などさまざまな美術作品に登場した。とりわけ、蛍や、鈴虫などの鳴く虫は人々に愛好され、描いた草花や虫で吉祥を表現した『草虫図』が中国から伝わると、中世以降に珍重され、多くの絵師たちに影響を与えた。
鈴虫蒔絵銚子 一口 江戸時代 17世紀 サントリー美術館(全期間展示)
上の2点とも:重要文化財 菜蟲譜(部分)伊藤若冲 一巻 寛政2年(1790)頃 佐野市立吉澤記念美術館(展示期間:8月9日~9月18日 ※場面替えあり)
約300年の太平期となった江戸時代には、発展した本草学や古画学習・俳諧といった文芸の影響を受けた、従前の草虫図の範疇には収まらない、多彩な虫の絵画が誕生した。細密描写で知られ、《菜蟲譜》などを描いた伊藤若冲(1716-1800)が京都で活躍した江戸時代中期以降には、虫聴(むしきき)や蛍狩(ほたるがり)が娯楽として町民たちにも広まり、やがて江戸の年中行事となっていく。
本展では、虫を愛(いと)おしむ文化としてひとつのピークを迎えた江戸時代を中心に、中世以降から近現代における「虫めづる日本の人々」の様相を伝える絵画や工芸品が展示される。虫と人との親密な関係を改めて見つめ直す企画展。
展示構成
第一章:虫めづる国にようこそ
第二章:生活の道具を彩る虫たち
第三章:草と虫の楽園―草虫図の受容について―
第四章:虫と暮らす江戸の人々
第五章:展開する江戸時代の草虫図―見つめる、知る、喜び―
第六章:これからも見つめ続ける―受け継がれる虫めづる精神―
縮緬本 Images Japonaises(日本の面影)(部分)鈴木華邨 一冊 明治29年(1896)千葉市美術館(展示替えなし、通期で公開)
information
「虫めづる日本の人々」
会期:2023年7月22日(土)~9月18日(月・祝)
※作品保護のため、会期中展示替・作品の場面替を行う
開館時間:10時-18時
※金・土曜および8月10日(木)、9月17日(日)は20時まで開館
※各日とも入館は閉館30分前まで
会場:サントリー美術館(東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階)
休館日:火曜(9月12日を除く、同日は18時まで開館)
入館料:一般 1,500円、大学・高校生 1,000円、中学生以下無料
関連企画
呈茶席(お抹茶と季節のお菓子)
開催日:7月27日(木)、8月3日(木)・17日(木)・31日(木)、9月14日(木)
時間:12時、13時、14時、15時にそれぞれお点前を実施(お点前の時間以外は入室不可)
会場:6階茶室「玄鳥庵」
定員:各回12名(1日48名)
呈茶券:1,000円(入館料とは別に必要)
※呈茶券は当日10時より3階受付にて販売(予約不可、先着順で販売終了、1人2枚まで)
※詳細および最新情報はサントリー美術館ホームページを参照
サントリー美術館ホームページ
https://www.suntory.co.jp/sma/
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