東京・湯島の文化庁国立近現代建築資料館にて、国立アイヌ民族博物館主催による、プンカㇻ協働展示「アイヌの建築と工芸の世界 - チセ、マキリ、アットゥㇱ -」が3月1日より開催されている[註]。
チセ(家屋)模型 平取町立二風谷アイヌ文化博物館蔵
「チセ」とは、アイヌ語で家屋を指す。出産にはじまる人々の暮らしが営まれる場であり、しごとをする場であり、彼らが崇拝するカムイに祈る場にもなった。室内には炉があり、そのまわりでは生活を支える道具類も人々の手によってさまざまにつくりだされて、例えば、男性はマキリ(小刀)で木を彫り、そこに独自の文様を刻み、女性は樹皮からとった糸で布を織り、刺繍を施したアットゥㇱ(樹皮衣)をつくりあげた。
明治期以降、このような昔ながらの「チセ」での暮らしおよび「チセ」そのものの姿も徐々に消えていったものの、アイヌの人々が培ってきた暮らしの技術は今日まで伝えられている。
本展は、アイヌの伝統的な家屋である「チセ」にスポットをあて、植物が多用されている建材や「ケトゥンニ」と呼ばれる三脚式の屋根構造など、建築的視点で紹介している。同様に、彼らが採集した自然素材でつくられるアイヌの儀礼具や民具のほか、現代の作り手たちによる工芸品も展示している。
展示構成(展示数:約130点)
1.アイヌの歴史と文化
2.アイヌの儀礼 ーチセで祈るー
3.アイヌのくらし ーチセの中のくらしー
4.民具の素材 ー木の恵みー
5.地域のアイヌ文化 ー地域の誇り、伝統技術の粋ー
マキリ(小刀) アイヌ民族文化財団蔵
会期中、アイヌ文化を学ぶ体験型イベントや、国立アイヌ民族博物館、プンカㇻ会員機関の研究員・学芸員によるギャラリートークも開催される(内容な日時など詳細は国立近現代建築資料館ホームページを参照)。
information
令和5年度プンカㇻ協働展示「アイヌの建築と工芸の世界 - チセ、マキリ、アットゥㇱ -」
会場:文化庁国立近現代建築資料館(東京都文京区湯島4-6-15湯島地方合同庁舎内)
会期:2024年3月1日(金)~3月24日(日)
開館時間:10:00-16:30
休館日:月曜
入館料:平日 無料(都立旧岩崎邸庭園への入場は別途料金が必要) / 土・日曜・祝日は旧岩崎邸庭園経由の入場(有料 一般400円)
主催:国立アイヌ民族博物館
共催:文化庁国立近現代建築資料館、浦幌町立博物館、新ひだか町博物館、平取町立二風谷アイヌ文化博物館
後援:北海道アイヌ協会
展覧会詳細
https://nama.bunka.go.jp/exhibitions/2403
註.プンカㇻ協働展示とは、アイヌ文化でつながる博物館等ネットワーク事業(愛称 プンカㇻ)の取り組みとして、国立アイヌ民族博物館と68の会員機関が協力し、アイヌ文化を紹介するもので、「プンカㇻ」とは、ブドウ、サルナシなどの植物の蔓を意味するアイヌ語で、ネットワーク事業の「繋がり」や「広がり」から連想した名称となっている。