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【未】ケンチク学ビバ Vol.62|広島工業大学

広島工業大学
環境学部 建築デザイン学科
准教授 杉田宗

 取材・文/加藤純

 1961年に創立した、広島工業大学。建築を学べる学科としては工学部建築工学科のほか、93年に増設された環境学部建築デザイン学科がある。2016年に環境デザイン学科から改組された学科で、この改組にあたってデジタルデザインのカリキュラムを整備し、研究室を持ったのが杉田宗さんである。国内ではまだ少ない「建築×デジタル」の教育を実施し、デジタルファブリケーションを利用した設計やものづくりの環境を整えている。
杉田さんは「建築業界では、設計と施工と維持管理が分断されていることが大きな問題です。これらを繋げる情報技術のリテラシーを、学生のうちから高めることが世界標準になっていくと思います」と語る。自身は建築やインテリアデザインの分野で留学や海外勤務経験があり、「設計が好きな学生を増やしたいし、デジタルツールで設計する若者を育てたい」という想いが強くある。

段階的かつ体系的に学ぶ
コンピューテーショナルデザイン

 建築デザイン学科のカリキュラムは、設計を軸に木工インテリアとデジタルデザインで構成されている。デジタルデザインは、大きくはコンピューテーショナルデザイン、デジタルファブリケーション実習、B IM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)実習の3つがあり、段階的に進んでいく。「コンピュータで作業するだけでなく、実際の製作を通してデジタルとアナログを横断するコンピューテーショナルな思考を養い、つくりながら考える力を伸ばすのが特徴です」。
 1年生ではベンチを手づくりすることで木工を体得する一方で、後期に3Dモデリングの基礎を習得し、コンピュータ上で形状を自由につくる技術を身に付ける。2年生までは約120名の学生のほぼ全員がコンピューテーショナルデザインを履修し、各自のパソコンに3Dソフトをインストール。2年前期では3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタル工作機械を用い、作製した3Dモデルを具現化する方法を覚える。
2年後期にはデジタルデザイン系科目の出口として、BIMを使った設計の基礎を学ぶ。BIMは3Dモデル上で部材情報などの属性を付加した建築物のデータを、設計や施工、コスト計算や維持管理まで一元的に運用するというもの。属性情報を持った3Dモデリングについて理解し、モデルの図面化とビジュアライゼーション、基本設計レベルの技術を習得する。


多彩なものづくりを通して
多角的な思考を培う

研究室に配属されるのは3年生の前期。杉田宗研究室では、2年生までに学んだコンピューテーショナルデザインをさらに進め、デジタルファブリケーションによりパーティションやパビリオンなどをつくる。「一般的な設計課題では向き合うことのない、材料や工法、予算やスケジュールといった現実に直面することで、多角的な思考が鍛えられます。そうして得られる考える力は、その後の研究やプロジェクトに活かされます」。パビリオン制作では3年生と4年生が協力することで、機械の扱いやポイントを習得できる。
4年生は各自で研究。テーマはデジタルファブリケーションやBIMが多いという。BIMに関連し、建築の維持管理を踏まえた「クリエイティブメンテナンス」も研究室で注力するテーマ。「循環型の建築が重視されるなか、デジタル活用を通してメンテナンスを捉え直すことが鍵と考えています」。ロボットも絡めた実証実験は、研究室の枠を超えて協働で進めている。「デジタルを通じて視野を広げて活躍できる場を、一緒に見つけていきたい」と語る杉田さんと学生たちの表情は明るい。


カリキュラムの内容
コンピューテーショナルデザイン
1年生後期にデジタルデザイン科目の入口として、3D CADソフトのRhinoceros(ライノセラス)に触れ、コンピュータ上で3Dのモデルをつくる基礎スキルを身に付ける。またプラグインソフトGrasshopper(グラスホッパー)を使い、要素(パラメータ)をプログラミングで操作するパラメトリックモデリングも学ぶ。学生は、杉田さんが公開する映像を授業開始前に見て操作を覚え、授業ではアウトプットに徹する。

1年生の最終課題で、建築デザイン学科がある校舎をつなぐ渡り廊下を新しくデザインした学生の作品(2点とも)。屋根や手すり、階段などをプログラミングを駆使して3Dで表現、学生それぞれが個性的な案をアウトプットする

「3次元模様」の課題で提出された作品。学生が1人ずつ伝統的な模様を選び、模様の構成を理解したうえでGrasshopperで再現し、3次元に展開していく

デジタルファブリケーション実習
デジタル加工機を使い、3Dでデザインされたものを具現化していくことに重点を置いた2年生の実習。レーザーカッター、3Dプリンタ、NC加工機(ショップボット)、それぞれの特徴を理解し、これらを用いる3つの課題を通してデジタルファブリケーションの特性を活かしたデザインを考え、加工に必要なデータ作製について学ぶ。各種加工機を据えた大規模な木工室を備えており、アナログなものづくりとデジタルでのものづくりを行ったり来たりできるような環境としている。

3人1組で原寸の「スタッキングスツール」をつくる最終課題。910×910㎜、厚さ12㎜の合板1枚を用い、NC加工機で実際に切り出して、組み立てる

600×400㎜の厚紙1枚で全長1mの橋をつくる課題。3Dモデルをパーツに分解、レーザーカッターで切り出して製作し、荷重をかけて強度を検証する

10×10×18㎝、体積450㎤以内で、一方向からの風に対して抵抗の少ないタワーの形を検討し、3Dプリンタで出力する。

BIM実習で3Dモデリングを理解
デジタルデザイン系科目のゴールとして、2年生後期でBIMによる設計の基礎を習得。BIM特有の属性を持った3Dモデリングを学び、実習では3Dモデルから基本設計レベルの図面やパースを作製。扱うBIMソフトはArchicadまたはRevitのどちらかで、ビジュアライゼーションのソフトTwinmotionとの連携まで行う。以降の設計演習や卒業設計でBIMを繰り返し使い、実践に近いデジタル技術を身に付ける。学生同士で頻繁に意見交換することでスキルアップを目指す。

2年生前期の設計演習の課題で取り組んだ「オフィスビル」を題材として、BIMを使って自ら再び設計する。仮想プロジェクトの基本図一式を、BIMで再現する課題にも取り組む。最終的な図面をイメージしながらモデルを編集することで、図面の質を上げていく。

ミース・ファン・デル・ローエ設計の「バルセロナ・パビリオン」を、図面をもとにモデリングし、内観・外観をレンダリングする課題。光の当て方の効果や視点の設定での見え方も学ぶ。


研究室の活動
デジタルファブリケーションの試行
学生は3年生の前期からゼミに配属となり、2年間を研究室で過ごす。杉田宗ゼミでは、それまでのデジタルデザイン系の授業では扱いきれなかった内容を習得する。デジタルファブリケーションの延長としてのプロトタイピング、Grasshopperの応用、ビジュアライゼーションなどのワークショップを開催。学生同士が教え合うことでの学びの効果も期待している。

以下未着手

BIM上で研究室を描き、その空間で撮影した画像でどこから撮影したかを推定
撮影した画像をもとに、現実の研究室を3次元で再構成した
STUDENTS’VOICE 伊藤純平さん(修士2年)

建築も情報系のことも好きで、学部時はプログラミングを学び、建設業界での効率化をテーマとした企業でエンジニアもしていました。建築と情報を合わせることを研究したいと、大学院で志手研究室に入り、今後はデジタルツインの構築のなかで、要素技術の開発と研究をしていくつもりです。

建物の価値を利用者から見る
「スマートビル」などの建物が、利用者の視点からは何に価値があるとみなすのかを分析し、建物には何が求められているのかを考察。アンケート調査を統計的に分析することで、傾向や施策をまとめた。さらに求められる建物の価値を踏まえ、これからのスマートビルやスマートシティが目指すべき方針を示す。

建物の価値に関する項目の重要度(5段階)を示した図(左から住宅、職場、公共施設)
建物の機能で重要視される要素についての図
STUDENTS’VOICE 小島瑚子さん(修士2年)

建築を学ぶなかで、建物がつくられる過程や使われること、また新しいことができるデジタルへの興味が高まり、志手研究室を選びました。先生は研究に打ち込んでいますが、学生には優しく指導くださっています。学生がどう考えているかを引き出して、それをベースに発展させてくれるように思います。

BIMモデルをAIで分析
画像からさまざまな情報を抽出できるCNNという画像認識のモデルは、基本的には選択肢を事前に設定し、どれに該当するかを回答する。その際に、数値情報だけを出力するように変更し、読み込ませる画像とデータベースの画像の数値を照合して最も近いものを考察。BIMモデルをAIで効率的に分析することに役立てる。

左端が検索対象の画像で、右3点が検索結果を示し、対象との一致度を数値化する

ディープラーニングモデルが画像の特徴をどのように学習したかを2次元、3次元のグラフとして可視化したもの

STUDENTS’VOICE 武石裕貴さん(修士1年)

BIMソフトを初めて授業で触ったときに感動し、最先端のことを取り入れて研究することに惹かれ、志手研究室に入りました。建設分野でのAI活用に興味があり、論文ではプログラムを組める学生と一緒に分析しました。修士課程では、ChatGPTのような言語モデルを使った自動化に焦点を当てる予定です。

建物緑化と修繕周期の関係を考察
建物緑化が建築物の修繕周期に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした研究。特に、緑化量(屋上緑化や壁面緑化の規模)と修繕周期(建物の防水工事や外装の劣化の進行速度)に着目し、これらの関係を定量的に分析。建物緑化量に基づき、緑化率0.58を超えると「超緑化建築」に分類されるという指標を提示した。

「アクロス福岡」を対象として、ヒアリング・アンケート調査を実施

「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」

「新目黒東急ビル」

STUDENTS’VOICE 松浦大成さん(修士1年)

卒業後の就職を踏まえたときに、BIMが必須だろうと研究室を選びました。建物の緑化にも以前から興味があったことから、建物の維持管理とつなげた研究をしています。志手先生は授業では静かな印象だったのですが、研究室の説明では「意欲のある人を募集」と熱い側面を見せていたことに惹かれました。

Kazuya Shide

1992年国立豊田工業高等専門学校建築学科卒業後に竹中工務店に入社し、施工管理、生産設計、研究開発に携わる。2013年千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻博士後期課程修了。14年から芝浦工業大学にて建築生産マネジメント分野の教育研究に従事する。主な専門分野は建築生産、ファシリティマネジメント、BIM(Building Information Modeling)。博士(工学)、技術経営修士(専門職)、一級建築士、一級施工管理技士、認定ファシリティマネジャー。

芝浦工業大学建築学部建築学科
東京都江東区豊洲3-7-5tel 03-5859-7000(代表)
https://www.shibaura-it.ac.jp/ faculty/architecture/

『コンフォルト』2025年6月号(No.203)より

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