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ミラノ・デザイン・ウィーク 2026 レポート「ヨーロッパ、世界に浸透するジャパニーズ・スタイル」

取材・文・写真/浦江由美子 Yumiko Urae

サローネ国際家具見本市会場に出展のKoyori

 

4月14日から19日まで開催されたミラノ・サローネ国際家具見本市、ミラノ市内でもショールームでの特別展示やポップアップ企画など昨年から、さらに郊外などへの展示範囲も広がり、多くの人で賑わっていた。サローネ見本市の公式発表によると中東情勢の影響でアジアからの来場者数が少しは減ってきていたものの、ヨーロッパやアメリカからはプラスの来場者数を記録。このところ、いわゆる大量生産から細かい職人の手仕事やクラフトに注目が集まる中、勢いのあったのが日本からの出展だった。

◾️HIDEO

 

見本市会場で2年に1度行われる、サローネ国際バスルーム見本市と市内、トルトーナ地区Super Studio Plu内にKarbonyとのコラボレーションで出展。日本ブランドという信頼のシンプルなデザインと機能性に加え、雰囲気のある展示が注目されていた。メインの生産をイタリアで生産することにより、サステナブルな取り組みとシッピングなど具体的なオーダーへのハードルを下げているようだった。

https://www.hideo.design/

 

◾️檜創建

緑と水の豊かな岐阜県を拠点とし、地域に伝わる木工技術を活かした檜の浴槽を製造。4年ぶりのミラノでの出展では欧米のみならず、中東やインドなどからの関心も高かったという。檜の、木の浴槽はトレンドに左右されないため、万国からの問い合わせがあるという。裕福層の邸宅などカスタマイズ・バスルームを求める個人がターゲット。特製のコンディショナーを用意するなど、メンテナンス面も配慮している。

https://www.hinokisoken.jp

 

◾️カリモク家具

ミラノ市内トリエンナーレ美術館での展示から5回目のミラノ出展。今年のデザインウィーク期間中は3箇所での展示があった。今年、実体験を伴うイマーシブな展示を試みるメーカーが多い中、サローネ見本市会場〈Karimoku Case〉ではNormアーキテクツと芦沢デザインによるブティックホテルを設定とした250m2の空間作りが際立っていた。レセプション、ラウンジ、客室など落ち着きのある静かな豊かさを演出。すべてがプロダクト展示でなく、ベットや照明など、この展示のために特別に作られたプロトタイプもあり、さりげなく工芸品が置かれたりと、ライフスタイル・ブランドのイメージを大きくアピール。オランダに物流センターを設けることで在庫を確保することで、欧州での販売も好調のようだ。

https://www.karimoku-case.com/

 

◾️Koyori

ブルレック兄弟、マイケル・アナスタシアデス、ガムフラテージ、ヴィンセント・ヴァン・デュイセンとデザイン界の錚々たるメンバーとのコラボを発表するKoyori。日本の丁寧な職人による作業に、妥協のない木製チェアやテーブルが並び、見本市会場ではデザイナー名を見て、知らずに訪れる人も多かったそう。新たな発見で驚くバイヤーも見かけた。Hinode ChairやKawara Armchairなど、日本語からインスピレーションを受けたプロダクト名、技術の蓄積とコンテンポラリー・デザインの絶妙なコラボレーションが実現し、ヨーロッパでは不動の地位を画一、国内外で大きな反響を呼んでいる。

https://www.koyori-jp.com/

 

◾️川島織物セルコン

1843年創業の京都の織物ブランドは「織の地層」をテーマとした織物、テキスタイルの質感を大きなインスタレーションで表現。会場となったPaloa Lenti Milanoはデザインのメインストリーム圏から離れた産業コンプレックスのエコロジカルで有機的な緑がいっぱいの展示スペースだ。その中でもコンクリート打ちっぱなしの空間での展示は土の蓄積が地層となり岩となる過程を1本の糸が織りによって、厚みと光を表現した、まさにアートピース。ジャガード織りのみならず、手縫いや、すくい織りという手織りの技法でシルクと馬毛を使うなど、表現の豊かさと蓄積は老舗ならではの底力を感じた。

https://www.kawashimaselkon.co.jp/event/milan2026/

 

◾️アダル Looking into Nature 

イタリアのプレミアム・ウエルネスブランドSTARPOOLからの誘いでコラボが実現。調和をアピールした展示をミラノ市内中心サン・バビラ地区で発表したアダルのLook into Nature。い草を側面にカバーしたフロート式ウオーターベットは睡眠の質の向上やスポーツ後のリラクゼーションなどを推進する。井草という素材について知ってもらうために、サンプルが用意され、Tatamiに使われている自然素材であることを質感や香りなどで丁寧に説明していた。日本独自のい草と自然のインスピレーションの源とする、心地よいウエルビーイングを推奨するSTARPOOLのコラボレーションはミラノデザイウィーク後も展示が続いていた。

https://www.starpool.com/

https://www.adal.co.jp/lookintonature/

 

◾️Matera Collective – Salone Raritas

Photo: courtesy of Salone del Mobile.Milano

今年からスタートした限定デザインアイテムやビンテージ・アイテムを紹介するプラットフォームSalone Raritas。ギャラリー他、Herzog de MeuronやZaha Hadid事務所など有名建築家も出展していた。中でもイタリアのメーカーMateraはオランダ人アーティスト、シュテファン・シュロッテンにキュレーションを依頼し、建築廃材となった大理石をリサイクリング、1デザイナー250点の限定作品を発表していた。ブルレック兄弟、リチャード・ハットンなど有名デザイナーとのエディションに加え、シュロッテン氏は2016年のArita Projectで日本に滞在中に日本人ネットワークも広げ、本山真帆、柳原照弘が本企画に参加している。「有田では何代にも引き継がれたものを大切に使っている。代々、受け継げられていく価値あるものを提供したい」とシュロッテン氏。トレンドに飽きたクラフトへの回帰がここでも顕著だった。

 

◾️Nagano Interior

佐賀が拠点のGate Light Design主宰の関光卓氏。おもちゃ、カトラリーから家具と幅広いデザインを行なっている。https://gldesign.jp/

福岡を拠点とする無垢材を中心とした家具メーカー。サローネ開催間近に関光卓氏デザインの椅子、Aeris(エアリス)/DC367がドイツのRed Dot Awardを受賞したとのニュースが飛び込んできた。「一目見た瞬間に座ってみたいと感じる椅子を目指した」と語る関光氏、実際に会場では「背もたれ部分が革でできているところに驚く方が多いですね。」と語る。座り心地も非常に安定していて、背中にあたる本革の柔らかさが心地よい。ナガノインテリアの技術におる木のフレームと革という異素材のハーモニーは独特なたたずまいがあるグッド・デザイン。

https://nagano-interior.co.jp/

 

◾️Meisdel

今年はサローネ見本市会場で2年に一度のキッチンとキッチンテクノロジーの展示、Eurocucinaの年でもあり、サローネ会場以外でもビルトイン・キッチンブランドのポップアップ展やイベントなどがミラノ中で展開していた。トールトーナ地区で初出展したのがMeisdel。元々はレストランなど業務用の厨房機器の製作を手掛けてきたしてたタニコーが今まで培ってきた技術で洗練されたオーダーメイド・キッチンを現実化した。Meisdelはドイツ語のMeister(マイスター)とEdelstahl(ステンレス)の造語。天板に使われるステンレスは厚みもあり、耐震性、耐熱性にもすぐれた素材を極めている。部分的に天然石や木を使用し、異素材とのバランスのとれたデザインに関心が集まり、会期中に口コミで来場者が増えたという。

https://meisdel.com/

 

デザイン界に評価されるにはサステナブルな責任あるものづくりや、プロダクトそのものの物語も重要視されている。丁寧な手仕事やものずくりの精神と伝統がホリスティックな人の暮らしを考えるデザイン・プロダクトが求められる昨今。今年は日本からのブランドへの信頼性を加速させた印象だった。

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