横浜 三溪園「臨春閣―建築の美と保存の技―」

三溪園《臨春閣》外観

近代日本の経済界を牽引した横浜の実業家、原三溪こと富太郎(1868-1939)。書画の才もあり、茶人でもあった彼は、自ら差配して古建築を現在の横浜市中区の敷地に移築・作庭し、現在まで続く名園「三溪園」を造園した。その移築建造物のひとつ《臨春閣》は、豊臣秀吉が建てた聚楽第の遺構とされ、紀州徳川家の所有だったこともあるこの名建築を、三溪は「桃山御殿」と呼び、秀吉ゆかりの美術工芸品を蒐集して室内を装飾した。ここでは、長男・善一郎の婚礼や、三溪自身の葬儀も行われるなど、原家にとっても特別な建造物と言える。

《臨春閣》では現在、約30年ぶりとなる、こけら葺き・檜皮葺き屋根の補修工事と、耐震補強工事が行われている。屋内の欄間やそれに附属する色紙などを取り外して補修し、第二屋と第三屋の繋の間の壁に埋め込まれていた、他に類例がないとされる美術品「板絵十二支図額」の調査も行われている。本展では、これらの貴重な美術工芸品の数々が、《臨春閣》に戻される前に、園内の三溪記念館で特別に公開される。補修工事の過程がわかる資料や、30年前には高度な技術を要したコロタイプ印刷で複製に置き換えられた障壁画も、今回初めて原本と並べて展示される。

主な展示物:彫刻欄間(波、菊、桐)、浪華十詠和歌色紙、板絵十二支図額、伝狩野永徳筆「芦雁図」、花鳥人物彫扉、黒漆螺鈿楼閣人物図扉(地袋戸)、春日出新田建築図 ほか

会期中の11月21日から12月6日にかけては、紅葉の名所としても知られる園内の、重要文化財建造物2棟と三重塔を望む《聴秋閣》の奥の遊歩道も一般公開される。

彩色復元図作成中の「板絵十二支図額」(丑)

information

「臨春閣―建築の美と保存の技―」
会期:2020年10月15日(木)~12月20日(日)
開園時間:9:00-17:00(入園は閉園30分前まで)
会場:三溪園 三溪記念館 第1・2・3展示室(神奈川県横浜市中区本牧三之谷58-1)
観覧料:無料(入園料に含まれる)
入園料:大人(高校生以上)700円、小人(中学、小学生)200円、横浜市内在住65歳以上 (濱ともカードの提示要)100円
主催:三溪園(公益財団法人三溪園保勝会)
詳細 https://www.sankeien.or.jp/event/1623/ 

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