アートディレクター、デザイナーとして、多岐に渡る分野で世界を舞台に活躍した石岡瑛子の仕事を総覧する企画展。石岡の大規模な回顧展はこれが世界初となる。
石岡は1938年東京生まれ。東京藝術大学を卒業後、1961年入社した資生堂で手がけた、前田美波里を起用してそれまでの化粧品コマーシャルとは一線を画したポスター(1966)や、1970-80年代のパルコの広告といった一連の仕事において、解放された女性像を提示しつつ、東洋と世界の諸文化を対照・混合させながら、新しい時代を切り拓いていく。
ポスター『西洋は東洋を着こなせるか』(パルコ、1979年)アートディレクション
1980年に海外に拠点を移して以降も石岡の活躍はめざましく、マイルス・デイヴィスのアルバム『TUTU』のアートワーク(1987年グラミー賞最優秀レコーディング・パッケージ賞)、ヴェルナー・ヘルツォーク演出のオペラ『忠臣蔵』の衣装および美術(1988年舞台美術・衣装 ニューヨーク映画批評家協会賞)、フランシス・フォード・コッポラ監督の映画『ドラキュラ』の衣装デザイン(1993年アカデミー賞衣装デザイン賞)など、あらゆる領域のデザインに挑戦。映像作家で映画監督のターセム・シンとは、2000年の初監督作品『ザ・セル』に始まり、2006年公開の『落下の王国(The Fall)』、そして石岡の遺作となった2012年公開の映画『白雪姫と鏡の女王(Mirror Mirror)』の3作品で衣装を担当し、作品全体の映像美や世界観の形成にも大きな影響を与えた。この間、シルク・ドゥ・ソレイユの2002年のステージ『ヴァレカイ』の衣装、ビョークとのミュージック・ビデオ『コクーン』(2002年)、2008年北京オリンピックでのプロジェクトなどに携わり、いずれも単なるコスチューム・デザインの枠に収まらなかった。彼女に仕事を依頼する側も、従来の価値観を大きく打ち破るような新たな可能性の創出を期待していたと思われる。
石岡瑛子 映画『落下の王国』(ターセム・シン監督、2006年)衣装デザイン ©2006 Googly Films, LLC. All Rights Reserved.
本展では、初期の広告キャンペーンから、2012年に73歳で没する直前のプロジェクトまで、約50年にわたる彼女の仕事を、「TIMELESS:時代をデザインする」「FEARLESS:出会いをデザインする」「BORDERLESS:未知をデザインする」の3つの章立てで紹介する。劇中で使用された衣装のほか、石岡が描いたイメージスケッチ、現在は日本で見ることができない作品の映像も披露される。なお、本展のタイトルは、2003年に石岡が出席した世界グラフィックデザイン会議における、彼女の講演内容から引いている。
information
展覧会「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」
会期:2020年11月14日(土)〜2021年2月14日(日)
休館日:月曜(但し、11月23日、2021年1月11日は開館)、11月24日(火)、12月28日(月)〜2021年1月1日(金・祝)、1月12日(火)
開館時間:10:00-18:00(展示室への入場は閉館30分前まで)
観覧料:一般 1,800円、大学生・専門学校生・65歳以上 1,300円、中高生 700円、小学生以下無料
※予約優先チケットもあり
※開催内容は、今後の新型コロナウイルス感染症拡大の影響などの都合により、変更となる場合あり
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F・地下2F(東京都江東区三好4-1-1 木場公園内)
問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル / 8:00-22:00 年中無休)
会場ホームページ:https://www.mot-art-museum.jp/
関連イベント
11月20日(金)14:00より、「VIRTUAL ART BOOK FAIR(VABF)」関連イベントとして、本展にあわせて刊行される評伝『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』(朝日新聞出版)著者の河尻亨一氏(元『広告批評』編集長)と、本展担当学芸員の藪前知子氏によるトークセッションが、公開収録とライブ配信で開催された。終了後、アーカイブとしてYouTubeのVABF公式チャンネルにて配信されている。
https://youtu.be/J8bQ8ZgWP9o