三越製作所は、三越の前身である「三越呉服店」の家具加工部を元とし、1910年(明治43年)に始まるその歴史は、日本が生活様式の近代化を本格的に目指した時代とも重なっている。室内装飾と一体となった特注家具から1脚の椅子まで、木取り・組み立て・塗装といったすべての工程を通貫で製作している。国会議事堂や最高裁判所など、日本を代表する公共施設で求められる上質なインテリアの洋家具や室内装飾は、三越製作所が手がけたものである。
現在は、ファイブスターホテルや、商業施設の建装や空間デザイン、住環境のオートクチュール・リノベーションなどを事業とする、三越伊勢丹プロパティ・デザイン(IMPD)直営の木工家具工場として、「100年先も誇れる家具と建装」を合言葉に、環境への配慮と、永く愛されるサステナビリティの両立を目指したものづくりを続けている。2020年に創立110年を迎えた。
三越製作所について
http://www.impd.co.jp/news/2020/201104_Comp_1/index.html
展示される貴重な絵図面
「受け継がれる匠の技と美意識」と題した本展では、三越製作所の110年に及ぶ軌跡を、貴重な資料や展示の数々を通じて辿る。1968年(昭和43年)に三越製作所が製作し、宮内庁に納入した〈玉座〉の試作品は本展が初公開。実際に納入されたものは、漆塗りの最高技法である「蝋色(ろいろ)」仕上げ、刺繍職人が本金糸を用い、手作業で仕上げた背もたれの菊の紋章など、試作品ながら、最高峰の匠の技が細部にまで結集した傑作。また、日本の生活様式の近代化とともに歩んできた三越製作所の歴史を現代に伝えるものとして、徳川侯爵邸の室内装飾の提案資料である〈絵図面〉も特別に展示される。
さらに会場には、三越製作所の工房を再現。先人の職人たちから受け継ぎ、大切に使い続けられる工具や椅子の木地型板などとともに、三越製作所の足跡を紹介する映像も上映される。これらの空間展示から、製作のプロセスや、ものづくりの根底に息づく哲学と思想を伝える。
三越製作所 内観(東京都大田区東六郷)
このほかにも、モダンデザインの傑作として名高い《バンブーチェア》のオリジナルや、建築家・隈研吾氏とのコラボレーションによって生まれた新作家具《topo》も披露されるほか、三越製作所のイズムを受け継ぐIMPDが展開する「JAPAN LUX(ジャパンラグジュアリー)」のオリジナルキッチン《練》も展示される。
これら新旧の展示を通して、現代にまで受け継がれる匠の技を辿り、その革新性を帯びた美意識の正体に迫る。
左:バンブーチェア 右:隈研吾デザイン《topo》
information
「受け継がれる匠の技と美意識」
会期:2021年3月10日(水)〜16日(火)
開館時間:10:00-19:00(入場は18:30まで)
会場:日本橋三越本店 本館1階中央ホール(東京都中央区日本橋室町1-4-1)
TEL:03-3241-3311(大代表)
展覧会詳細(3月10日(水)公開):https://hautecouturerenovation.com/rekishiten.html