柳宗悦(やなぎ むねよし、1889-1961)の没後60年に開催される本展は、柳らが蒐集した陶磁器、染織、木工、蓑、ざるなどの暮らしの道具類や大津絵といった民画のコレクションとともに、出版物、写真、映像などの同時代資料を展示し、総点数450点を超える作品と資料を通して、時代とともに変化し続けた民藝の試みを、俯瞰的な視点からとらえなおす大規模展。会場デザインを、建築家の西澤徹夫氏が担当する。
《スリップウェア鶏文鉢(とりもんはち)》イギリス 18世紀後半 日本民藝館
本展でとりわけ注目するのは、「美術館」「出版」「流通」という三本柱を掲げた民藝のモダンな「編集」手法と、それぞれの地方の人・モノ・情報をつないで協働した民藝のローカルなネットワークについて。柳による民藝の実践は、美しい「モノ」の蒐集にとどまらず、新作民藝の生産から流通までの仕組みづくり、あるいは農村地方の生活改善といった社会の問題提起、衣食住の提案、景観保存にまで広がりを見せた。1931年には、民藝運動の機関誌として雑誌『工藝』を創刊している。
雑誌『工藝』第1号‐第3号 1931年(型染・装幀 芹沢銈介) 写真提供:日本民藝館
「近代」の終焉が語られて久しい今、持続可能な社会や暮らしとはどのようなものか? 「既にある地域資源」を発見し、人・モノ・情報の関係を編みなおしてきた民藝運動の可能性を、かつて柳が批判的な意見を寄せたこともある東京国立近代美術館を会場に、改めて見つめなおす。
展示構成
I章「民藝」前夜―あつめる、つなぐ [1910年代—1920年代初頭]
『白樺』:東と西が出会う場所|富本とリーチ|『陶磁器の美』と初期コレクション
Ⅱ章 移動する身体―「民藝」の発見 [1910年代後半—1920年代]
朝鮮の友へ|日本蒐集紀行|西欧蒐集紀行
Ⅲ章「民」なる趣味―都市/郷土 [1920年代—1930年代]
民家・民俗学と民藝|フォーク・アート|山本鼎と農民美術運動|用途の転換|発掘と地図|新しい民藝をつくる
Ⅳ章 民藝は「編集」する [1930—1940年代]
出版とネットワーク|歩くメディア―民藝と衣服|民藝フォント|トリミングの技術|流し掛けと渦巻─自然・平易・自由|「展示」する技術|デザイナー柳宗悦|生産から流通まで─たくみ工藝店
Ⅴ章 ローカル/ナショナル/インターナショナル [1930—1940年代]
「日本」の民藝地図|境界:沖縄|日本文化の対外発信|東北の民藝と「経世済民」|境界:アイヌ|境界:朝鮮|境界:中国・華北|境界:台湾|民藝と戦争|終戦と「美の法門」
Ⅵ章 戦後をデザインする―衣食住から景観保存まで [1950—1970年代]
国際社会のなかのMINGEI|民藝と「プリミティブ」|国立近代美術館を批判する|民藝とインダストリアル・デザイン|柳宗悦の死と民藝ブーム|衣食住のデザイン※作品保護のため、会期中に一部展示替えあり
前期:10月26日(火)~12月19日(日)
後期:12月21日(火)~2022年2月13日(日)
なお、本展の特設ショップには、ナガオカケンメイ氏が率いるD&DEPARTMENTが参加し、同店のセレクトによる物販を通じて「これからの民藝」を提案するほか、全国の民藝を扱うショップからも全4店舗が2週ごとに出店する。
ポスタービジュアル:《羽広(はびろ)鉄瓶》 羽前山形(山形県) 1934年頃 日本民藝館
information
柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー、2Fギャラリー4
会期:2021年10月26日(火)~2022年2月13日(日)
休館日:月曜(2022年1月10日を除く)、年末年始:12月28日(火)~2022年1月1日(土・祝)、1月11日(火)
開場時間:10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00、入館は各日とも閉館30分前まで)
観覧料:一般 1,800円、大学生 1,200円、高校生 700円
※中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料(入館の際に学生証や障害者手帳などの提示要)
※本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)も観覧可能
主催:東京国立近代美術館、NHK、NHKプロモーション、毎日新聞社
協賛:NISSHA、三井住友海上
特別協力:日本民藝館
読者プレゼント
この展覧会のペアチケットを抽選で5組10名様にプレゼントします。
メールタイトルに必ず、「東京国立近代美術館 柳宗悦没後60年記念展 チケットプレゼント」と明記し、送付先の住所・郵便番号・氏名、年齢と、『コンフォルト』の感想もお書き添えのうえ、下記メールアドレスまで([@]→@に変えて)お申し込みください。
info[@]confortmag.net
応募締切:2021年11月29日(月)
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