1910年代から30年代のヨーロッパを中心に、各地で現れたさまざまな「モダン」のかたち。これまでジャンルに分かれて紹介されることが多かったモダンデザイン、装飾芸術、ファッションを一堂に集め、相互の関係性にもスポットをあてた展覧会「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」が、愛知県豊田市の豊田市美術館にて開催されている。
1914年に勃発した第一次世界大戦を挟むこの年代は、機能主義に基づく「モダニズム」が主な潮流だったとみなされている。その一方で、大衆消費社会が進展したこの時代、装飾にも価値が置かれた「モダニティ」の痕跡を同時にみることができる。この2つは対立軸のようでいて、注意深く観察すると、いくつもの「モダン」が内包され、複雑に関係しながら、ともに濃密な時代をつくり上げていった。
ブルーノ・パウル《ダイニングチェア》 1908年 織田コレクション、北海道東川町
当時の作家たちは、今日のようなインターネットこそ存在しないものの、リアルタイムに近い速さで情報を共有し、国やジャンルを越えて”同期し合っていた”と考えられる。その領域は、絵画、彫刻から、家具、食器、洋服、それらを収める建築や都市まで、いわば、私たちの生活空間、身体活動全般におよんでいる。
例えば、建築家のヨーゼフ・ホフマンとデザイナーのコロマン・モーザーによって設立されたウィーン工房は、フランスのファッションデザイナー、ポール・ポワレと刺激し合い、建築家で室内装飾家のロベール・マレ=ステヴァンなど同国のモダニストにも影響を与えていた。彼らの生活全般への眼差しは、また、日本で新しい生活様式を模索した 森谷延雄や斎藤佳三らにも共有されていく。
フェリーチェ・リックス=ウエノ《テキスタイル「クレムリン」》1929年 島根県立石見美術館
同時主義絵画で知られるソニア・ド ローネーは、ファッションの仕事に専心し、建築、家具デザインを手がけたルネ・エルブストらモダニストは、都市を彩るショーウィンドウデザインに大きな関心を寄せた。そして、1919年にドイツで開校したバウハウスでは、女性作家が織物に新たな光をあて、また同校を離れた作家たちが、同時期に開校したブルク・ギービッヒェンシュタイン美術工芸学校を舞台に応用芸術教育に取り組むことになる。
また、フランスでは、ロベール・マレ=ステヴァンらが中心となり、1929年に現代芸術家協会UAMを結成。ドイツ・バウハウスが弱体化するこの時期に、ル・コルビュジエやシャルロット・ぺリアンらによって、フランス独自のモダンデザインが展開されていく。
マルセル・ブロイヤー《クラブチェアB3（ヴァシリー）》 1925年 豊田市美術館
世界が一気に同期する、その最初にして最大級の歴史上の転機となる第一次世界大戦の前後で、急速に変化していく社会のなかにいた作家たちは、ときに交わり、ポリフォニー（polyphony）のように共鳴しながら、それぞれが「モダン」のかたちを追求していく。その膨大な軌跡を、国内外の美術館や企業、コレクターらが所蔵する貴重なコレクション約400点で紹介する（会期中、一部展示替えあり）。
information
展覧会「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」
会期：2022年6月7日（火）〜9月4日（日）
開館時間：10:00-17:30（入場は17:00まで）
休館日：月曜（但し、7月18日と8月15日を除く）
観覧料：一般 1,400円、高校・大学生 900円、中学生以下無料
主催：豊田市美術館
共催：中日新聞社
特別協力：東京国立近代美術館、東京藝術大学、ミサワホーム
協力：日本航空、ヤマト運輸
助成：一般財団法人地域創造
豊田市美術館ホームページ
https://www.museum.toyota.aichi.jp/
読者プレゼント
この展覧会のペアチケットを抽選で5組10名様にプレゼントします。
メールタイトルに必ず「豊田市美術館 交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー展 チケットプレゼント」と明記し、送付先の住所・郵便番号・氏名、年齢と、『コンフォルト』の感想もお書き添えのうえ、下記メールアドレスまで（[@]→@に変えて）お申し込みください。
info[@]confortmag.net
応募締切：2022年7月22日（金）
ご応募をお待ちしております。
