「インテリアライフスタイル」イタリアパビリオンレポート

取材・文・撮影/塩野哲也

2023年6月14日〜16日、東京ビッグサイトで毎年恒例の「インテリア ライフスタイル2023」が開かれ、3日間で約19,000人と昨年を上回る来場者で賑わった。コロナ禍の収束とともに海外から出展者が来日できるようになり、デンマーク、イギリス、インドなどのナショナルパビリオンも出展。その中から、「イタリアの生活文化を伝える」をコンセプトに18社が集まり(展示面積216 ㎡)、初来日のメーカーも多く見られたイタリアのパビリオンを紹介する。

 

【La Favorita社】

工房の職人やデザイナーの能力を活かしたいというロベルタさん。地元ウンブリア州はワインで有名なトスカーナ州に隣接。「ウンブリア州のワインも美味しいから試してみて!」とのこと。

La Favorita社は1970年に創業したウンブリア州のインテリアメーカーで、ガラスや陶磁器製のインテリアアクセサリーや、それらで装飾した家具を制作している。コロナ禍をきっかけに工房の絵付けデザイナー女性9名の新しい能力をひきだそうと、2代目のロベルタ・ダッテリさんが考えたのが一点もののアート壁紙「Art in rolls」。全て手描きによるアート壁紙で、そこに様々な陶器製アクセサリーを磁石で取り付け、立体感を付加して一つの物語を描くような、今までにない壁装飾を提案していた。 すでに世界各国のホテル、レストランに採用されていて、イタリア国外のプロジェクトではオンラインで絵柄の打合せを行い、完成した壁紙を丸めてアートピースと一緒に梱包して送付している。小さなパッケージで流通コストを抑えつつ、大面積の壁を創作することができる。歴史的な壁画が多く残るイタリアの文化が感じられ、日本のレストランやホテルにも受け入れられるだろう。
https://artinrolls.com/

【Manifattura Di Domodossola社】


ハイブランドの店舗内装に使われているメッシュ状シート。しっかりした立体感がある。

Manifattura Di Domodossola社はアルプスをのぞむ古都 ドモドソーラにあり、創業100年を超えるメッシュ状の編み物のメーカーである。革やメタル繊維をはじめ様々な素材の編み物は、ハイブランドの靴やバッグ、ベルトの素材に使われ、この分野では高い信頼とシェアを誇っている。
「OXILLA」はインテリア向けブランドで、内装材や家具材料向けのメッシュ素材を製造し、高級ブティックやホテルに採用されることが多いそうだ。注目は天然皮革の端材でテープ状のレザーを編んだメッシュ状のシート。エコロジカルなテーマ性に加え、テープの幅や色、編み方のバリエーションが豊富で、デザイン性の高さを感じさせる素材である。日本では藤川貿易が扱っている。
https://www.fujikawa-co.com

【OTQ社】

コルクベッド「BISU」。製品名にはサルデーニャの方言を使っている。
3 代目社長でデザイナーのMatteo Congiu さん。

OTQ社は地中海に浮かぶサルデーニャ島の家具メーカーで、デザイナーを兼ねる3代目のMatteo Congiuさんが、コルクを使ったベッド「BISU」を出展した。コルクの産地といえばポルトガルが有名だが、サルデーニャ産はきめが細かく、明るい発色で世界的に評価されている。 Matteoさんはコルクを使ったサルデーニャならではの家具を提案したいと、ベッドをはじめテーブル、キャビネットにもコルクを使用。上質なコルクシートを張ったベッドは湿気に強くカラッとした寝心地で、湿度の高い日本の気候にあうと考えた。静電気が出ないのでホコリを寄せ付けず清潔に保てる。今回は日本の石庭にインスパイアされたというアートボードも展示していた。
伝統的な家具工房を継いだMatteoさんは、国際的な見本市に積極的に参加し、各種デザイン賞を受賞している。ミラノサローネでも高く評価された。グローバルに認められる鍵となったのは、地元名産のエコ素材コルクをシンプルモダンに入れ込んだ発想力にあると感じた。 https://otqdesign.it

【ISO BENESSERE社】


ヒマラヤ岩塩のブロックを加熱し、ヒーラー効果のある風を送る。LEDによる色の効果も期待できる。

ISO BENESSERE社は、スパ、ウェルネス、エステ用機器のメーカーで、マッサージベッドやリラクゼーションチェア、タンニングマシーンなどをベネチアに近いベネト州の自社工場で製造している。機器にはLED照明が内蔵され、光の色で空間の雰囲気をコントロールすることが得意である。 エステ向けベッドにはウォーターマットレスが置かれ、約36℃に保たれた水温が全身をリラックスさせ、マッサージ効果を高める。独自の仕切りによって、マットの揺れを防いでいる。 ユニークなブロック状のヒマラヤ岩塩を積んだ装置は、ヒーターで岩塩を温め殺菌効果やヒーラー効果のある風を部屋全体に送ることができ、LEDによって様々な色に変化する。最近はこうした機器を個人邸に置くケースも増えているそうだ。こうしたウェルネスな機器には、イタリア人の感性が生きている。日本ではジェイアイグループの扱いである。 https://j-i.co.jp

【OUTERRA】

アウトドアキッチン「VENERE」
OUTERRA「DAFNE」
OUTERRA「DAFNE」
Metalco社のストリートファニチャー「ATOLLO」

「OUTERRA」は、コロナ禍で急増したエクステリア需要に応えた、デザイン性の高いアウトドアキッチンのブランド。鉄板焼きのようなグリルやフライヤー、コンロ、薪ストーブ、回転式グリルなど加熱方式が豊富にチョイスでき、シンクはもちろんワゴン型のワインクーラーなど、アウトドアファニチャーの高級化に対応した仕様である。ホテルやウェディング施設、高級グランピングはもちろん、別荘にも採用できそうである。インドアキッチンと同等の機能性、デザイン性を持つところにグルメ大国イタリアの底力を感じる。もともと外で食べることの多いお国柄だから、アウトドアキッチンにも食事の場を盛り上げるエンタメ性がある。 親会社のMetalco社はイタリアの公園、道路、空港、駅などで見かけるストリートファニチャーやサイクルスタンド、ゴミ箱などで大きなシェアをもつメーカーで、屋外向けの金属加工技術には定評がある。天然木と組み合わせた製品も多く、防腐処理したイロコ材をつかったベンチやゴミ箱が展示されていた。日本では輸入代理店アルクが扱っている。 https://outerra.it/

コロナ禍の影響で欧州からの渡航が制限されている頃、日本の見本市は「海外からモノは来るけれど人は来ない」という状態が続いていた。今回は久しぶりに海外から出展者が来日し、製品に対する思いを直接聞くことが出来た。やはりリアルな見本市の魅力は、こうした人と人の触れあいにあり、特にイタリアは対話を大切にする国と感じる。自社製品に増して、自分たちの街や特産品を熱心に語る姿に、人としての魅力を感じた。こうした人達が作った製品を使いたいと思わせるのが、イタリア製品の持つ力なのだろう。

急速な円安で取引が難しい状況にあるのも確かだが、いま世界的なブームとなっているアウトドアキッチンや、エコロジカルなリサイクル皮革にイタリアらしいデザインを加えた内装材、手描きのアート壁紙など、競争力の高い製品が多く見受けられた。 一方出展者からは、来年もぜひ出展したいという声があがっているようだ。当初、彼らの多くは製品が受け入れられるか不安があったようだが「日本のマーケットは、想像以上に自分たちの製品を理解してくれた」と自信をもった出展者もいたようだ。次回はより多くのイタリア企業に来日してもらい、日本ではあまり見られない独自性の高い製品を披露してほしいと感じた。

https://www.ice-tokyo.or.jp/interiorlifestyle2023/

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