メゾン・エ・オブジェ2022年9月展/パリ・デザイン・ウィーク2022【番外編(下)】

海外リポート「メゾン・エ・オブジェ2022年9月展」「パリ・デザイン・ウィーク2022」のうち、パリ・デザイン・ウィークの紹介です。

▶は見たり、触れたときに抱いた感想です(フランス語も英語もわからないので、目から得た情報が多いです……)。

 

〈パリ・デザイン・ウィーク 2022〉

パリ・デザイン・ウィークは2022年9月8日〜17日の間、パリ市内で多くのイベントが開催され、400以上のブランドが参加していました。その一端を紹介します。

 

Psychanalyse d’un meuble à quatre pattes

フランスの13の家具工房がつくる工芸的なパーツや工具を用いて、装飾家のVincent Darréがアレンジしたインスタレーション「Psychanalyse d’un meuble à quatre pattes」は、パリ造幣局で催されました。フランスの家具団体L’ Ameublement françaisの企画展示。Vincent Darréは、キャビネットを用意し、それを舞台として各工房の技を内部に凝縮しました。

青や緑、赤といった原色で彩られた空間のそれぞれに、4本脚のキャビネットを設置。
キャビネットのひとつ、Charles Parisは鋳造でブロンズの照明器具をつくる工房。円錐のベースに木の葉を貼り付けて型を取り鋳造、表面を仕上げて照明になるまでの工程を示している。
「技術の粋をじっくりと御覧ください」と言わんばかりに、各キャビネットには拡大鏡が添えられていた。写真はバスルームの水栓やアクセサリーを製造するVOLEVATCH。
Le Lit Nationalのベッドを解体し、そのパーツを再構築。

▶一見アートのようでいて、近づくとインテリアにまつわるパーツや工具で構成されていることに気づく。目の高さのキャビネットに納まっていて、その中をのぞき込むように鑑賞。対象物に否応なく意識が集中する。

 

PARIS DESIGN WEEK FACTORY(会場は2カ所)

ESPACE COMMINES

キュレーターのEmily Marantがセレクトした24作品を展示。フランスの若手デザイナーが手がけた作品はフレッシュで、チャレンジ精神に満ちていました。

MATANG

建築と家具の間、と自らを位置づけるMATANGは、植物の根や花などを染料としてロープを染め、それを木の板に張って家具をつくり出していました。

ロープをグラデーションで染め上げている。
染料の材料となったウコン、カモミール、アカネ。

▶植物の染料で染められたロープは、木とも相性がいい。日本の空間にもフィットしそう。

 

Ostrea

フランスでは毎年25万tの貝殻が廃棄されるといいます。そのうちリサイクルされるのはほんのわずか。それを骨材としてOstreaは新たな素材を生み出しました。

貝殻はフレーク状に粉砕してから用いられる。

骨材。上は牡蠣、下はムール貝。

▶フランスの食文化が表れていて興味深い。

 

◎GALERIE JOSEPH FROISSART

デジタルマガジン『Acumen』の運営もしているMichael TimsitのギャラリーのひとつGALERIE JOSEPH FROISSARTに、世界中から数多くのデザイナーが集結し、作品を展示しました。

 

Manufacture de papier

「紙で家具をつくる」、というプロジェクトに親子で挑んでいるManufacture de papier。そのテクスチャーは手漉きの和紙を彷彿とさせます。

▶紙のテクスチャーはどこか懐かしく、でも色合いや模様ははっとするものばかり。

 

WATANUKI, VIGNAU ET SHIMOGAWA

日本の下川織物からの出展作品は、パリの国立工業デザイン学校で出会った綿貫亜希とセシル・ビニョによる久留米絣。

上と下右がセシル・ビニョの作品で3色の経糸に、短い横線を描くように緯糸を渡している。明確な色差のある経糸と緯糸で麻の葉文様を織り出した綿貫亜希の作品は左下。

▶「エスプリの効いた着物地!」と思ったら、日本の織物会社だった。メゾン・エ・オブジェでは日本の出展が少なかったので、ようやく巡り合った感。

 

以下は、パリ市街のギャラリーやショップでしていたブランドです。

Maison Dada

ダダイズムを世界中に吹き込もうと2016年に立ち上げたMaison Dada。日常のものに「普通」でないものをプラスすることで意外性のある家具や照明器具などを送り出しています。

上は背の上部がハンガーになった「JULES」。下は「Little Eliah」。同じデザインでペンダントライトもある。

▶くすっと思わず笑顔になるアイテムが揃っていた。

 

UniFor

本誌189号でも紹介したOMAによるオフィス家具「PRINCIPLES」。

▶残念ながら訪問した日は休みだったが、家具が回転するRON GILADが手がけたインスタレーションは稼働していた。

 

Fosfens

配光の幅が広く、演色性も高い器具を生み出すFosfensのプロダクトは、6つの照明ブランドを抱えるManufactures de Luxのショールームで展示されていました。

自らオーバークオリティという精巧なつくりで、頑丈なケースにパーツが納められていた。
Manufactures de Luxのショールーム。左手前のフロアスタンドがFosfensの照明。

▶顕微鏡とかカメラのレンズのような、とにかくメカニカルな照明器具だった。

 

Liaigre-rue du Bac

上質なインテリア・プロダクトが揃うとエルクリエーションの高田真由美さんからおすすめされたLiaigre-rue du Bacのショールーム。

▶凛としたゆるぎのなさが伝わるインテリアだった。

 

LA MANUFACTURE DES TAPIS DE COGOLIN

テキスタイルブランドのCogolin。ほとんどが手織りの織機を用い、200以上の色の糸で厚みのあるラグを生産しています。カーテンや椅子の張り地、クッションも。

▶写真はラグコレクション「tapis」のCantres(パターン織り)。70㎝幅で手織りしてから接いでいるという。糸の配色もデザインも、思わず「かわいい!」と声に出してしまうものばかりだった。

 

メゾン・エ・オブジェ2022年9月展はこちらから

(文・写真/阪口公子)

 

Information

メゾン・エ・オブジェ https://www.maison-objet.com/

MOM https://mom.maison-objet.com/

パリ・デザイン・ウィーク https://www.maison-objet.com/en/paris-design-week

日本での問合せ メゾン・エ・オブジェ日本総代理店 株式会社デアイ

E-mail:mo-japon@deai-co.com

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