メゾン・エ・オブジェ2022年9月展/パリ・デザイン・ウィーク2022【番外編(上)】

2022年12月号(188号)が、11月5日に発売されました。
今号は、「ワークプレイスの許容力」という特集です。新しいワークスタイルに対応した空間を紹介しつつ、これからの変化を含めたワークプレイスの可能性について言及しています。

また、海外リポートとして、「メゾン・エ・オブジェ2022年9月展」「パリ・デザイン・ウィーク2022」も掲載しています。誌面では伝えきれなかった作品やブランド、プロダクトのうち、興味を惹かれたものについてここに追加したいと思います。数が多いので、メゾン・エ・オブジェとパリ・デザイン・ウィークに分けて紹介します(全体の概要はどうぞ本誌188号で!)。
▶は見たり、触れたときに抱いた感想です(フランス語も英語もわからないので、目から得た情報が多いです……)。

 

〈メゾン・エ・オブジェ 2022年9月展〉
年に2回開催されるメゾン・エ・オブジェ。今年の9月展は9月8日から12日まで、フランス・パリのノール・ヴィルパント見本市会場で開催されました。

 

GIOBAGNARA
イタリアで皮革を用いたホームアクセサリーや家具を制作するGIOBAGNARAは、1990年代後半に設立されました。牛革200色を揃え、クロコダイルやシャグリーン(サメやエイの革)なども扱い、また大理石、木材、金属などと組み合わせたプロダクトも展開しています。

デザイナーとコラボした家具を展示したブースの前面。
トラバーチンとレザーの組み合わせ。
曲面で形づくられた足元。レザーはヌバック?

▶出隅がアールのマッシブなフォルムに引き寄せられた。すると座面はトラバーチンで足元がレザー! 斬新な組み合わせとフォルムに驚いた。

 

LcD TEXTILE EDITION

べルギーのテキスタイルブランドLcD TEXTILE EDITIONは、金属繊維の織物を表情豊かに展開していました。光を反射する金属は、織物にすることで繊細なテクスチャーをまとい、それとともに見る角度によって異なる印象になります。

ブースには、さまざまな織物がきらめいていた。
フレームに張って透ける屏風のようなパーティションもあった。

▶金糸・銀糸を織り込む西陣織のテキスタイルを彷彿とさせる。日本でも紗(しゃ)を建具や欄間に張ることがあるが、パーティションの意匠はそれに通ずる。

 

STONELINE

STONELINEは大理石や花崗岩、オニキス、石灰岩、トラバーチンなど石材を扱うトルコの会社です。エポキシ樹脂やセメントをベースに、石を象嵌したアーティスティックな人工大理石「Palezzo」も製造しています。

「Palezzo」の一例。

▶「Palezzo」は色もデザインも自由な上、端材を活用できるのも好ましい。

 

Mark Oliver

Mark Oliverはルーマニアの家具工房です。ダイニングテーブルを中心にコンソールやシェルフも扱っており、金属のベースに薄いシャープな天板を載せたスタイリッシュなデザインが特徴になっています。

ブースでは突板によるダイニングテーブルのほか、緻密な年輪のコーヒーテーブルも展示されていました。

天板はオークやウォルナットなど広葉樹の突板ほか、薄くスライスした石(下)も。

▶デザインのシャープさもさることながら、天板に用いられる素材の渋い色みがよかった。

 

DACRYL

「DACRYL®︎」は、アクリルパネルの表面に彫刻を施したり、植物や鉱物、テキスタイル、和紙などをアクリルに閉じ込めてパネル化したマテリアル。アクリルは透明度が高く、光を透過してテクスチャーや内包した素材を浮かび上がらせます。日本の和紙来歩(WASHI LIFE)ともコラボしているようです。

透光を意識してつくられたブース。

▶透明度が高いアクリルだけに、デザインが活きている。

 

JIMMY ARTWOOD

木と樹脂を組み合わせて家具などをつくるJIMMY ARTWOOD。木はコブ杢や大きな節があったり、割れや曲がりのある、一般的に家具には向かない個性的なものばかり。それに樹脂を組み合わせることで、いっそうキャラクターを強調していました。

木×樹脂の力強さにあふれたブース。

▶木もさることながら、樹脂も着色して景色がつくられており、掛け算的な押しの強い表情だった。

 

PASCAL OUDET

フランスでエンジニアの職に就いていたPASCALは木工技術に出会って、木工職人に転身したそうです。作品に使うのは極薄の木の板で、ボウルや花瓶、照明カバーなど。目の詰まったグリーンウッドを使うとのことです。

木目がレースのように光を透かす独特の作風。

▶変形の度合いを予測しながら制作するというが、自然の力が作用して、一つひとつ光の透け具合や形状が異なる。

 

FORESTIER

フランスの照明器具メーカーのForestierがつくり出すのは繊細な光の表情。創業者は植物を刈り込んでつくる彫刻、トピアリーアートが好きだったといいます。それが踏襲されていて、線材によるやわらかいデザインが特徴となっていました。

竹やテキスタイルコードによる器具。
マニラ麻を編んでシェードに。
シルクを用いた雲のような「Nebulis」。

▶今回のメゾン・エ・オブジェでよく見かけたのは、植物を乾燥させたり、繊維にしてつくられた照明器具だった。ここもそのひとつ。

 

DCW editions

照明と家具をプロデュースするDCW editionsは、コルビュジエが愛した照明として知られる「GRAS Lamp」の復刻をきっかけに、2008年に創業しました。

中央に吊られているのは、沖津雄司が2018年にミラノサローネで発表し、今年製品化された「FOCUS」。

▶WHAT’S NEW?のCOLOR POWERでも「FOCUS」は採用されていた。レンズのように見えるけれどフラットで、不思議な図像を描く。

 

CREATIVE-CABLES

綿や麻、ポリエステルなどで包んだ、カラフルなケーブルを生み出すイタリアのCREATIVE-CABLES。それらを用いた屋内外の照明器具も扱っています。

ブースはさまざまな色のケーブルで覆われていた。

▶カラフルなケーブルは見ているだけで楽しい。照明器具も躍動的だった。

 

PASSION DU TAPIS

PASSION DU TAPISはフランスのカーペットエディター。製造はインドで行っています。緞通をはじめ、ハンドタフテッドやキリムなどのプロダクトのほか、オーダーカーペットも請け負っているようです。

経年変化で柄が消えかかったたようなラスティックなデザインが並んでいた。

▶2018年に訪れた「インターテキスタイル上海 ホームテキスタイル」(本誌165号)でも、同様のラスティック系が多かったことを思い出した。

 

ETNA DESIGN

ラトビアのETNA DESIGNはサステナブルな素材で家具をつくるメーカー。バサルト繊維(玄武岩を溶かしてつくった繊維)を用いたハンギングチェアをメインに扱っています。バサルト繊維は耐久性や耐候性に優れ、風車の羽根や街灯の柱など、主に外構に使われる素材だそうです。

ラトビアのいくつかのブランドと共同展示していた。

▶ザラリとしたテクスチャーだが、適度なしなやかさがあって座り心地はよかった。

 

パリ・デザイン・ウィーク2022はこちらから

(文・写真/阪口公子)

 

Information

メゾン・エ・オブジェ https://www.maison-objet.com/

MOM https://mom.maison-objet.com/

日本での問合せ メゾン・エ・オブジェ日本総代理店 株式会社デアイ

E-mail:mo-japon@deai-co.com

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