近代的な百貨店・デパートメントストアが誕生した20世紀初頭から、ショッピングモールなど大型商業施設が多数登場する現代に至る歴史について、主に日本の「百貨店建築」をキーワードに、ファサードやその空間の変換に注目しながら、当時の写真や建築模型とともに年表形式で辿る企画展(監修:浅子佳英、菊地尊也)。
白木屋日本橋店(1928年、提供:石本建築事務所)
戦前の百貨店における建築空間やファサードなどには、時代背景に基づいた実験的な試みを見ることができる。当時の百貨店とは、人々の憧れを誘うものであり、単なるショッピングのための空間を超え、エンターテイメントとして、さらには文化的な装置としても機能していたためである。
例えば、かつて東京・日本橋の交差点にあった白木屋日本橋店(1928年:石本喜久治設計)のファサードは、壁面にガラスを用いて、それまでの重厚な、いわゆる「百貨店建築」を脱しようとしたモダンなデザインであった。屋上もそのひとつであり、現在もターミナルビルとして存在感を放つ松屋浅草店(1931年竣工、設計:久野 節)にはかつて、本格的な遊園地と動物園が存在していた。
大阪においては、4年におよぶ改修を終え、2019年にグランドオープンした大丸心斎橋店(心斎橋筋側 1922年竣工、御堂筋側 1933年竣工、設計:ヴォーリズ建築事務所)の既存外観やエレベーターホールなどが、往時の「百貨店建築」の華やかさを今に伝える貴重な存在となっている。
大丸心斎橋店1階エレベーター(1933年、提供:J.フロントリテイリング史料館)
本展は、商業や消費活動といったものが、いかに現代の都市形成に深く関与してきたかを再認識する機会を提供している。
フライヤーの写真:松屋浅草店にあった屋上遊園地(1950年頃)
information
「百貨店展 ―夢と憧れの建築史」展
会期:2022年9月7日(水)〜2023年2月12日(日)
会場:髙島屋史料館TOKYO(東京都中央区日本橋2丁目4-1 日本橋髙島屋S.C.本館4階)
開館時間:11:00-19:00
休館日:月・火曜(祝日を除く)、2022年12月26日(月)〜2023年1月3日(火)
入館料:無料
※混雑状況により展示室への入場を制限する場合あり
監修:浅子佳英(建築家・編集者、PRINT AND BUILD)、菊地尊也(建築研究者)
協力:小泉 立(建築家、PRINT AND BUILD)
髙島屋史料館TOKYOホームページ
https://www.takashimaya.co.jp/shiryokan/tokyo/