テキスタイル見本市「PROPOSTE2024」レポート

 コンフォルト198号より抜粋・一部改変
 本文/北原孝一 Koichi Kitahara(建築資料研究社出版部)
 監修・写真説明/室脇崇宏 Takahiro Murowaki(フジエテキスタイルクリエイティブディレクタ       ー)
    協力/イタリア大使館貿易促進部、Proposte srl

グリーンの文字をタップ・クリックすると各社のHP等にアクセスできます。

アウトドア用の拡充と「ソフトな質感」

RATTI社ブースの商談スペース。借景を活かしてクッション類がコーディネートがされており、仕事を忘れてしまうような華やかな空間だった。

PROPOSTE(プロポステ)」は、カーテンや家具の張り地用テキスタイルの生産者が、直接バイヤーやエディターとビジネスができる国際見本市として1993年にスタートし、今回で31回目を迎えた。イタリアを中心にベルギー、イギリス、フランス、ドイツなどから昨年より微増の合計79社が出展した。

会場は、コモ湖畔の邸宅

コモ湖の船着場から会場までは無料のフェリーで向かう。湖畔のチェルノッビオにある邸宅ヴィラ・エルバに到着すると、庭園の緑が優しく来場者を迎えてくれる。花壇や噴水を楽しみながら緑陰を進んだ向こうに見えてくる低層の建物が、会場のコンベンションセンターだ。
入場ゲートの先にある円形の展示エリアには、今年のテーマである「Textiles to ideasーテキスタイルからアイデアへ」を表すように、ソファや椅子、プールサイド用のリクライニングチェア約50種類近くが展示され、実際に座れた。昨年までこのエリアは、生地サンプルを吊り下げていただけだったが、実例があることで、テクスチャーや仕上げ、縫製がよくわかった。

ブークレ糸の人気は継続、
柔らかさの表現は多様に

ブークレ糸の人気は継続、 柔らかさの表現は多様に

4月のミラノサローネで各社から発表された新作のソファは、丸みを帯びたフォルムやラウンド形がトレンドになっていて、手触りにも視覚的にも「ソフトな」印象を与えるブークレ生地が多用されていたようだ。
今展も同様である。ブークレとはフランス語で「輪」を意味し、英語ではループヤーンと呼ばれるが、ループが太くなり、よりソフトで大きな凸凹によってモフモフ感が増した。滑らかなベルベット仕上げやコットン、ウールなど天然素材にレーヨン、ナイロンなどを混紡させ特別な仕上げで柔らかくさせるなど、新しいソフトな感触にも出会えた。

結び目風にブークレ糸を少しだけ見せたり、あえて毛羽立たせて柄を崩したり。さまざまな形状の意匠糸を使ったLIMONTA社の椅子張り生地。

わたの状態で染色した糸を使った、毛足の長いモヘア調のブークレヤーンを全面に織り込んでいる。Vagatex社。

輪の大きなジュート素材のブークレヤーンと金属的光沢感のあるリリアン糸(編まれた糸)を使用。CASALEGNO TENDAGGI社。

わたの状態で染色した糸を使った、毛足の長いモヘア調のブークレヤーンを全面に織り込んでいる。Vagatex社。

輪の大きなジュート素材のブークレヤーンと金属的光沢感のあるリリアン糸(編まれた糸)を使用。CASALEGNO TENDAGGI社。

CASALEGNO TENDAGGI社のカーテン用シアー。ザックリと織り上げ、あえて糸を引っ張り出したようなテクスチャーに。

オーガニックコットンを使用。ベースに光沢感のあるナイロンを織り込み、ユーズド感を出す起毛加工を施している。G.M.SYNTEX社。

CASALEGNO TENDAGGI社のカーテン用シアー。ザックリと織り上げ、あえて糸を引っ張り出したようなテクスチャーに。

オーガニックコットンを使用。ベースに光沢感のあるナイロンを織り込み、ユーズド感を出す起毛加工を施している。G.M.SYNTEX社。

新たなシーンを想起させるアウトドア用テキスタイル

新たなシーンを想起させる
アウトドア用テキスタイル

今年はアウトドア用テキスタイルが大幅に拡充されていた。上質なジャガード織りをメインにしていた会社や、カーテン用のプリント技術に長けていた会社のブースにも、アウトドア用のコレクションが用意されていた。ゴワつきのあった従来品に比べて仕上がりは滑らかで発色もよく、濃色表現も可能となっている。近年、ポルトローナ・フラウやB&Bイタリアなど高級家具ブランドから、屋内用と遜色ないデザインのアウトドア用ソファやリクライニングチェアが発表されている。そのラグジュアリー感を演出しているのはこういったテキスタイルだろう。

庭園を望む場所にアウトドア用テキスタイル「SAFARI OUTDOOR」を展示。高級椅子張り生地で有名なEDA社。

色のミックス感が美しいアウトドア用。防炎性能、海上での使用に関するIMO認証も取得。POZZI ARTURO社。

2種のソリューションダイ(原着糸)*を織り合わせたオリジナルの意匠糸で刺繍したアウトドア用テキスタイル。VANELLI社。

アウトドア用のブークレ糸を使ったジャガードによるインドア・アウトドア用。糸の形状を利用してモチーフを立体的に柔らかく表現している。RDQ社。

2種のソリューションダイ(原着糸)*を織り合わせたオリジナルの意匠糸で刺繍したアウトドア用テキスタイル。VANELLI社。

ベースの麻ライクな質感と毛足の長い白のシェニール糸*を高密度で織った繊細な表情が美しい。アウトドア用ポリプロピレン100%。RATTI社。

アウトドア用のブークレ糸を使ったジャガードによるインドア・アウトドア用。糸の形状を利用してモチーフを立体的に柔らかく表現している。RDQ社。

色のミックス感が美しいアウトドア用。防炎性能、海上での使用に関するIMO認証も取得。POZZI ARTURO社。

ベースの麻ライクな質感と毛足の長い白のシェニール糸*を高密度で織った繊細な表情が美しい。アウトドア用ポリプロピレン100%。RATTI社。

*シェニール糸:表面の糸をビロードのように毛羽立てた糸。シェニールは毛虫を意味する。

*ソリューションダイ(原着糸):一般的なカラー糸は紡糸後に染色するのに対し、原着糸は、糸の原料の段階で顔料を直接練り込むことで着色する。染色の工程で大量の水が使用されるが、原着糸の場合はその工程がないためサステナブルな材料として注目されている。

色は、
テラコッタ、
インディゴブルー、
グリーン系になどに注目

色は、テラコッタ、
インディゴブルー、グリーン系などに注目

ナチュラルでベーシックな素材感を持つ椅子張り地にもモスグリーンなどのグリーン系のカラーが加わる。Vagatex社。

鮮やかな色合いが王道のアウトドアテキスタイルも多いが、インドアで使うことも意識した落ち着いたトーンのカラーも多くみられる。フォレストグリーンやグレイッシュなブルーグリーン。LIMONTA社。

ナチュラルでベーシックな素材感を持つ椅子張り地にもモスグリーンなどのグリーン系のカラーが加わる。Vagatex社。

鮮やかな色合いが王道のアウトドアテキスタイルも多いが、インドアで使うことも意識した落ち着いたトーンのカラーも多くみられる。フォレストグリーンやグレイッシュなブルーグリーン。LIMONTA社。

高品質なリネンのシアーカーテンが特徴のベルギーから参加したDeltracon社からは人気のインディコブルーの新作が登場。

テラコッタや赤みのベージュなどナチュラルな素材感をいかしたカラーが印象的。糸自体に存在感があるテキスタイルが多く、糸の形状特有の陰影が生まれ色に深みがある。RDQ社。

スタートアップエリアに出展したFili Pari社の糸「MINERAL DYE」。大理石や鉱物をパウダーにして少ない水量で発色。

高品質なリネンのシアーカーテンが特徴のベルギーから参加したDeltracon社からは人気のインディコブルーの新作が登場。

テラコッタや赤みのベージュなどナチュラルな素材感をいかしたカラーが印象的。糸自体に存在感があるテキスタイルが多く、糸の形状特有の陰影が生まれ色に深みがある。RDQ社。

スタートアップエリアに出展したFili Pali社の糸「MINERAL DYE」。大理石や鉱物をパウダーにして少ない水量で発色。

素材・組織・加工を
掛け合わせて、
新しさを生み出す

素材、製織、加工を掛け合わせて、
新しさを生み出す

RDQ社の薄手のカーテン用ドレーパリー。金属的な輝きを持つルーレックス糸を使いながら生地を収縮加工。彫金でレリーフを施したような立体感がある。

太いジュートの糸を使い、縦横2本引き揃えでざっくりと織られたCASALEGNO TENDAGGI社のテキスタイル。特徴的なクラッシュ(しわ)加工で立体的に。

RDQ社の薄手のカーテン用ドレーパリー。金属的な輝きを持つルーレックス糸を使いながら生地を収縮加工。彫金でレリーフを施したような立体感がある。

太いジュートの糸を使い、縦横2本引き揃えでざっくりと織られたCASALEGNO TENDAGGI社のテキスタイル。特徴的なクラッシュ(しわ)加工で立体的に。

絵画のような厚盛りのタッチで職人が手描きでペイントしている。GioEmi社。

再生ポリエステルの難燃素材「トレビラCS ECO」を使ったシアー。糸をフリンジ状にカットして、表と裏で別の表情に。Lodetex社。

絵画のような厚盛りのタッチで職人が手描きでペイントしている。GioEmi社。

再生ポリエステルの難燃素材「トレビラCS ECO」を使ったシアー。糸をフリンジ状にカットして、表と裏で別の表情に。Lodetex社。

サステナブルの先へ

ここ数年業界が取り組んでいた「サスティナビリティ」のテーマは定着し、殊更前面に押し出すメーカーは減少し、コモディティ化に向かっている中で、これらの新しいテクノロジーや製品を発見できたことは収穫だった。

次回の開催は、2025年5月6日〜8日を予定している。

Related Posts

Begin typing your search term above and press enter to search. Press ESC to cancel.

Back To Top