石をもっと好きになる「丁場紀行」

タイルに、壁紙に、カーペット。
最近は、石の柄を用いた建材が多くみられるようになりました。
地球そのものを表す表情が、いま空間に求められているんだろうなと思います。

 

今春からはじまった連載「インテリアトレンドの潮目をつかむ!」は、
さまざまな分野のトレンドセッターに、インテリアのこれからについてお話を聞く企画です。
少し前になりますが、5月に発売した179号では、
矢橋大理石にうかがって最近の石の動向を教えていただきました。

 

矢橋大理石の歴史は、約120年。
本社がある岐阜県には、2年前に取材に行く機会がありました(168号に掲載)。
迎賓施設にもなっている洋館には、いまは貴重な国産の大理石がふんだんに使われていたり、
建築に使われてきた石の歴史から最新の石種までを体感することができました。

 

ウェブサイトでも最新石種を紹介するなど発信にも力をいれている同社ですが、
私が更新を楽しみにしているのが、
35年以上、世界各国の丁場をまわって原石を仕入れてきた
調達部の三木隆則さんによるウェブ連載「丁場紀行」です。
現在、第4弾まで公開されています。(こちらから読むことができます

 

丁場の写真左が「丁場紀行」著者で調達部の三木隆則さん。右は東京支店長の矢橋晋太郎さん。トルコ・マルマラ島のストリアートオリンピコの丁場にて。「マルマラ」はマーブル(大理石)の語源になったという、由緒ある場所。

丁場、といっても普通はどんな場所なのかイメージできないですよね。
私も山の中なのかなとか、大きな機械で切り出しているんだろうな、というぐらいのイメージでした。
この「丁場紀行」を読むと、
大正時代に大阪の住友本社ビルのために
イタリアに大理石を探しにいったところから大理石の輸入がはじまったこと。
丁場といっても、山もあれば小さな丘、さらに地下から掘り出しているところあり、
採掘場所や方法もさまざまなこと。
そして、工具も進化してきていることなどを知ることができます。

 

一緒に本社の取材をしたライターの清水潤さんは、これを読んで
「『007 慰めの報酬』の冒頭、大理石の採掘場でのカーチェイスを思い出した」と。
たしかに、迫力あるシーンのバックに丁場が見えます。
丁場紀行を読んだあとだと、ボンドよりも背景に目が行ってしまいます。

007のオフィシャルyoutubeからもそのシーンを観ることができますよ。

 

この清水さんの感想を、東京支店長の矢橋晋太郎さんにお伝えすると、
なんと007シリーズがお好きだそうで、
「イタリアのビアンコカラーラの丁場で撮影したと聞いてます。
ビアンコカラーラは、手前からロラーノ、カナルグランデ、ジョイアと
3つの丁場エリアがあります。
標高の高いところで撮影している感じなので、ジョイアの山で撮影したのではと思いました。
 
……が、詳しい方に確認してみたら、
ミケランジェロ丁場(ロラーノ)とファンティスクリティ丁場(カナルグランデ)
を中心に、一部、別の見栄えのいい場所でも撮影したそうです。
ピンポイントで当てるのは難しいですね」
と、よりマニアックな考察をうかがうことができました(笑)

 

私のおすすめは、No.3、4のインド編。
インドの丁場に向かう道中や、丁場での様子が詳細に書かれていて、
食事はこんな感じなのかー、こんな道を進んでいくのかー、など、はじまりから驚くことの連続です。
そして、掲載されている丁場の写真を見ていると、石はほんとうに地球の一部なんだなーと、
頭ではわかっていたことを、実感として理解することができました。

 

次回はトルコ編を執筆中との噂。
4つの記事を読んで、この先の「丁場紀行」の更新を一緒に楽しみに待ちましょう。

 

(編集部 渡辺)

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